第33話 大和成分補充しようとしたけど気づいたら全く違う内容になっていた
「ねぇ、フルール。……いいよね?」
そう言ってブランは蠱惑な笑みをしながら私に跨った。
「いいって、ど、どういうことですか。まさか、あんなことやこんなことする気ですか!?勿論ウェルカムです!」
ブランは舌なめずりをしながら
「そうよ、あんなことやこんなことをするつもりよ。だからね、服を脱いで頂戴。」
お、お、ちちちつけけけ。何故このような状況になってるか思い出そう。
明日は大和の実物を見せることになるって事で早めにベットに入って寝たんだ。そしたら、肩を揺らされて、起きたらお嬢が下着姿にワイシャツだけという、俗に言う『彼シャツ』姿だった。…エッッッッ。まあ私のシャツじゃないけど。そして私を誘惑してきてる
ふう、落ち着いたかな?さて、ここで私が撮る選択肢は一つしかない。いつヤるの?今でしょ。という事で、ル○ンダーイブ!
「ゲヘヘヘ、ここがイイのか嬢ちゃん。」
「んっ。そうそこがイイ」
(注 フルールはヘタレな為、手の甲をさすってるだけです)
「いい声で鳴けよ嬢ちゃん。これからおじさんがキモチイイ事教えてやるからよ。」
「んっ。いやぁん」
(注 フルールはヘタレry)
フーーフーー。落ち着け。まずは…何からすればいいんだろ!?やばい。テンパり過ぎて『お嬢と寝る時用行動書』の内容が全て飛んだ!ここは素直にキスから入った方が良いのか?それとも胸から攻めるべきか?それかいきなり下を攻めるか?やばいやばいやばい。どうしよう。
「ねぇ、フルール…キス…して」
お嬢は瞳を潤わせ、私の耳元で囁いた。まるで快楽に堕とす天使(あくま)の様に。
ここでいかなきゃ女が廃るってやつですよ。
私はゆっくりとお嬢に顔を近づけていった。心音がうるさい。周りの音が自分の心音のせいで聞こえなくなってきた。それほど、緊張と興奮しているのだろう。
そして、二人は幸せなキスを……
「起きて!フルール!このままじゃ遅刻するよ!!」
「ハッ!…え?え?」
部屋の中を見渡すと朝日が入っていた。私のベットが散乱している形跡もない、また私は寝る前に来ていた服装のままで、何よりお嬢が全く恥ずかしがっていない。
これはもしかして、もしかしなくても。
「お、お嬢、昨日の夜、私の部屋に来ましたか?」
頼む、お願いだ。
「夜?なんで私が自分の身を危険に晒さなきゃいけないのよ。どうせ変な夢見てたんでしょ」
夢だったかぁ!!なんでや!!なんで「お嬢とイチャイチャする……という夢を見たんだ」を体験しなきゃいけないんだ!!
「チ、チ、チックショォォォォォ!!!!」
拝啓、前世の両親へ。夢が現実になればなと思った事は、人間誰しもあると思います。そんな中で私は、声を高らかに上げ、私が一番そう思っている事を宣言できると思います。
敬具
フルール・ヤマト・ジャポニカ
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ブラン視点
「なんでや、なんでや、なんでや、なんでや、なんでや、なんでやなんでや、なんでや、なんでや、なんでや、なんでや、なんでや」
「カーミン、あそこのなんでやしか言わない物なんとかしてくれない?」
うるさいですね。そんなに良い夢見てたのかな?まあ、夜に部屋来た?とか聞いてるぐらいだから、…その…アッチ系な夢だったんでしょ。
「面倒臭いのでやですぅ。時間が経てばどうせいつもみたいなバカになりますからぁ。」
いつも思うけど、カーミンはフルールの扱い雑過ぎない?私も結構雑に扱ってるけど、なんかフルールはそう扱った方が仕事しそうだからね。
「まあ、こいつのバカやってんのいつも見てたんでぇ。必然的にこんな扱いになったんですよぉ。」
……また私の考えてる事読んでる。何?本当にそういう能力でも持ってんじゃないか疑うレベルだよ。
「まあ私も長生きしてますからぁ、その程度の事は普通に出来ますよぉ。多分200年ぐらいしたらお嬢様も出来る様になりますよぉ」
「200年って、そんな長生きできるわけないでしょう。というかなんで実体験みたいな感じで言ってるんですか?」
「そりゃぁ長生きしてるからとしか言えないですねぇ。たかが200年ぐらいあっという間ですよぉ。」
…え?この感じ本当に200年以上生きてる感じがする。じゃあなんで21歳なんて言ったんだ?それにフルールはこのこと知ってるのかな?
「詳しい年齢は教えてないですけどぉ、私が21じゃない事は知ってますよぉ。そもそも自分が何歳なんて、とうの昔に数えるの辞めましたけどね。」
カーミン、一体何者なんだ。自分の年齢を数えるのを辞めるほど長生きしてるなんて…あとこうも簡単に考えてる事読まれるんだったら、もう私喋らなくて良くない?
「何者って言われたら…んー、どう答えれば良いんでしょうか?……あっ、管理者。そう呼ぶのが一番正しい気がしますね。それと会話はしてくださいね」
「管理者?……もしかして、カーミン。貴女は人間ではない?それとなんでカーミンは顔が真面目な雰囲気になったら口調が変わるのでしょうか?」
「答えは、はい。それと口調が変わるのはキャラ作りですね」
「人間ではない…か、これまでの答えから推察するに、貴女は高次元生命体、もしくは神様でしょうか?」
「はい、私は3つの世界を管理する者です。お嬢様が知っている名前だとマルトレーゼと名乗った方が良いですね」
「は?マ、マルトレーゼ様?それってあのマルトレーゼ教の御神体である、あの?」
「そうですよ。神様オーラ出します?」
ハハハ、そんな荒唐無稽な話……本当だよな〜これ。オーラ見てみたいな。
「では、ほいっと」
あっ、これすごい奴だ。自然と敬まいたくなるし、頭下げたくなる。何より後光がすごい。
「神様が何故、メイドをやられてるのでしょうか?」
必然的に頭下げたくなってきた。それに言葉使いも。
「言葉使いや態度などはそのままでお願いしますね。それと理由ですが…ちょっと下界に落とし物をしてしまって、それを探すついでにフルールの観察に来ました。落とし物はかなり危険なので注意してくださいね」
「この事はフルールは知っているのですか?」
「知ってますよ。何せ私のたった一人の眷属ですから。まあ、本人は眷属になっているという事は知らないですけど。」
神の眷属って何をしてるのかな?…自由に生きる事しか考えられないけど。
「大体その認識であってますよ。神々によってはきちんと生活しなさいというとこもあるみたいですし。私はフルールが前は自由に生きていなかったから、今度こそは自由に生きてほしいなって思ってるの。」
「前?私と会う前って事ですか?」
「いいえ、もっと前。フルールが片山瑞希だった頃。あの子はね、一度死んでるの。」
……死んでる、生まれ変わってフルールになったって事?
「まっ、殺したの私なんだけどね〜」
「……えーっと、どういう事ですか?説明お願いします」
眷属を殺す?なんでそんなありえない行動をするわけ?やっぱり神の考えることは分からないわ。
「まあ…私なりの慈悲…ですね。管理者の眷属は規定上、一度だけ生まれ変わりが可能ですから。この子のね前いた世界はフルールに…いや、瑞希にとって生きにくい世の中だったの。」
「生きにくい世の中?」
「あの世界ではね、同性愛などについて、まだ寛容ではなかったの。そのことで瑞希は周囲の人から蔑まされ、『フツウ』に生きていけなかったの。他人から強制されるフツウにね」
「他人から強制される普通……」
「簡単にいうと、他人から人格を矯正されられる世の中って訳ですよ。あの世界では、幼少の頃から他人と合わせる、ということを叩き込まれるの。別に他人と合わせる事が悪い事だとは思ってないけど。
……例えば、皆と合わせるために3個変えなきゃいけない人と15個変えなきゃいけない人。どちらが大変だか分かるよね。瑞希が幼い時は全部変えるのが正しい。そう考えられてた時代だから、他人と変わっていた瑞希は幼い時から理不尽と向き合って生きていたの。
他人と合わせるために自己を偽る。そうやって子供も顔に絵の具を塗って大人にさせていった時代なの。だからその絵の具を厚く塗られた瑞希は言ってしまえばただの『ニンギョウ』」
要するにこの世界より異端に対して厳しい世の中だったってわけか。
「たまたま、一人で苦労している瑞希を目にしてね、なんて必死にもがいて、悩んで、苦しんで生きているんだろう?と思ったわ。これなら私の暇つぶしになる。そう最初は考えたわ。」
良くも悪くも観察って言葉が一番似合う気がする。
「けどね、見てて思ったの。この人はどんな逆境でも絶対めげないと。そう思ったらより一層興味が出てきて、ちょっと未来を見てみたの。そしたらね、一方的に虐げられる未来しかなかったの。笑えないレベルのやつしかなかったわ。その時に情が湧いたんだろうね。」
「そんなに酷い未来しかなかったの?」
「ええ、一方的に陥れられたり、虐げられたりする未来しかなかったわ。最終的に世の中に絶望して自殺する世界線しか無かったわ。
未来ってのは厄介でね。私達管理者並の力を持つ者か、過去を改変するしか変えることは出来ないの。だから瑞希が自殺するのは最早、確定事項だったの。だから私は未来を改変した。あの場で瑞希を殺して、割と自由に生きられるこの世界に生まれ変わらせたの。本人には実験のためとしか言ってないけどね。」
「これフルールの言葉で言うとツンデレですね」
「そうね。私はツンデレなのかもしれないね。それとこの事を理解してあげて頂戴。この子なりに悩んでお嬢様に生まれ変わった事を言ってないから。」
「残念ですけど、私は片山瑞希なんて人は知らない。だから前世の事とか言われても分からないんですよ。私の目に写ってるのはただのフルールですから。」
「……アッハハハハ!!いや〜これは安心できるね。この子と仲良くやってね」
管理者もポカンってなる事あるんだ。急に人間らしくなったなぁ。
「そうね。貴女達と一緒にいて人間っぽくなったのかも。さあ約束の時間まであと2時間ぐらいあるし準備を始めましょうか」
フルールもフルールなりに苦労してたんだ。それにあんな話聞いたら…雑に扱えないじゃん。今度からもうちょっと優しく接しよう。
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