第32話 迷物教師





 拝啓、前世の両親へ。異世界ものって大体出てくるキャラが似ていて、鉄板とも言えるべきキャラ設定のものがあると思います。やっぱりこの世界にもいたよ。だずげで、お嬢があんな事やこんな事されたら私は…





              敬具

              フルール・ヤマト・ジャポニカ






 「はぁ〜い、元気にしてるかしら?my sweeeeet boy達?」



 その人物は空間を崩壊しうるものと、そう表現した方が正しいだろう。

 脂肪がなく筋肉で引き締められた足、絶対に忘れられない程印象深い顔、流れる茶髪のサイドポニーテール。メリハリのハッキリとしたメイク。この世界で最先端ファッションであるゴスロリ服。そしてはち切れんばかりの豊満な胸筋……そう胸筋なのである!

 そう彼女は、いや彼女かれは漢女(おとめ)なのである!!




 「はぁ〜い、みんな〜席に着いて〜。そして自己紹介始めるわよ〜。」



 「なんですか、あの人は絶対人何人か殺ってるるよ。(小声)」


 もうね、ヤヴァイってやつっす。特にsweeeet

の発音が獲物を定めてる肉食獣のものとしか思えないほどですよ。



 「ああ、あの人はこの学園の名物教師だよフルール。確かキララ先生だったかな?(小言)」



 私は驚いて目を見開いた。これが名物教師だと?


 「確かに名物教師ですが…それにしてもなんです?キララって名前?アドルフとかゴードンみたいな漢前な名前じゃないんですか?(小声)」


 「本名はゴルゴーゾン・ゴリッキー。元Sランク冒険者で名誉騎士爵を持っています。今は引退してこの学園でキララ♡・ミルキー♡・スウィート♡と名乗ってますね。正直王家が注目している人です(小声)」


 流石王女。情報が早いわ。にしても王家が注目するって……いや悪い意味でじゃないよね?ていうか想像以上にゴリゴリしてた!



 「では先生から自己紹介始めるわよ。私はキララ♡・ミルキー♡・スウィート♡元Sランク冒険者です。今は引退してこの学園できゃわいいsweeet boy達を教育しているわ。私の事が気になるってboyが居るなら、是非私の研究室まで来て欲しいわ。

 じっくりとねっとりと教えてあ・げ・る♡」



 じっくりとねっとり……一体何が始まるってんだ!?よかったぁ、女で。男だったら掘られてたかも。

 けど男になってお嬢を攻めるのもありだな。いや逆にお嬢(男ver)に私が攻められるのはありかも…性転換薬ってあるのかな?

『Heyカーミン.性転換薬について教えて』

『ピコン!ハイ。こちらの情報が見つかりました。書類にまとめておきますか?』

『纏めといて』

『分かりました。帰るまでには纏めておきます。

で?なんでこんなふざけた会話してるんですかねぇ。言っときますけど、私はふ○なりは嫌いなんですぅ。だから性転換薬は絶対に渡しません。』




 「じゃあ次、王女様お願いしまーす。」



 おっと話を戻さないと。最近全然時系列が進んでないから寄り道は厳禁だと思ってたんですけどねぇ。『メタはダメですぅ』うっせぇわ幼女め。



 「はい、私はリリー・ウィア・マルメアです。皆さんと一緒に高め合えるように日々努力したいと思います。よろしくお願いします。」



 王女様なんて向上心があるのでしょう。この言葉を惰性でダラダラ大学に通ってる、日本の大学生に行ってやりたいですよ。(偏見しかありません)


 「じゃあ〜、次は次席のブランちゃん。お願いね〜」


 

 「はい、私はガブリエル伯爵家長女、ブラン=ガブリエルです。趣味は冒険者活動です。よろしくお願いします。」



 あーお嬢、貴族の前で冒険者とかあんまり言わない方が良いのに。まっ、どうせお嬢の事だから『冒険者活動してるけど、なんか文句ある?』ってスタンスなんでしょ。


 「次ぃ、フルールちゃん。」


 おやおや、私の出番でしたか。前から一回やってみたかった自己紹介のやり方、やっちゃいますか。




 「ジャポニカ帝国出身、フルール・ヤマト・ジャポニカ。ただの人間には興味がありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」



 決まった。一回やってみたかったんだよね、ハ○ヒ流自己紹介。これ日本の学校でこんな事やったら「アイツ頭おかしいじゃねーの」か「あっ、この人ハ○ヒ好きなんだ」の2択しか起こらないという事態になる。

 まあ、ハ○ヒ出た時、私社会人だったけど。




  「な、中々ユニークな自己紹介ね。次は成績順で上から4番目のミーシャちゃんお願いね〜。」



 「はい、私はリリー王女の護衛であるミーシャ・フォン・ビスマルクです。リリー様護衛の立場なので距離ができてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。」



 


 ここからの自己紹介は割愛させて頂く。ただの有象無象の紹介なんていらないでしょ。ベ、別に作者が「あ〜、設定考えるのめんど〜、じゃあ登場させないで、必要なキャラだけ追々登場させればいいでしょ。下手に設定作って、作っただけで今回だけしか登場しないなんて事ありそうだし。」とか全くこれっぽっちも思ってないですからね。…本当だよ。本当に。本当だからね。





 


 不思議なちからによって無事?全員自己紹介が終わった。今日の授業はもう終わりだから適当に解散とのことらしい。



 「お嬢、もう学園に用事が無いのでとっとと帰りましょうよ。私達の愛の巣に」


 「はいはい、愛の巣ね。貴女はシアンの小屋で寝泊まりする事が決まってるから。そこで寝なさい。」


 「ゑ?冗談ですよね。そ、そんな酷い真似しませんよね?」



 「ん?別に行動が良くなれば元の部屋に戻れるかもね。」


 え、ちょっと待って。これってガチ?ガチっぽいオーラがプンプンするんだけど。ここは素直に土下座するしかないか。



 「はい、この度はお嬢及び、関係者各社の方に多大なるご迷惑をお掛けした事をお詫び申しあげます。」



 ジャパニーズ土下座。これこそ話し合いを円滑に進めるための技術である。



 「はいはい、冗談だからね。…半分は」



 「ちょっと、半分ってなんですか!?半分ほんとって意味じゃないですか!」



 「あの〜、フルール皇女。ちょっとお話があるのですがよろしいですか?」



 あ、またしても空気になっていたリリー王女だチッスチッス。



 「ええ、なんですか?」


 「実は前の謁見の時に、ヤマト?でしたっけ?それの実物を見せるとのことになりましたが、父上が4日後の13時から時間取れるので、その時間空いてますでしょうか?」



 え〜なにそれ。こっちの時間はok、貴方達は?って、しかも4日後普通あり得ないでしょ。

これ絶対下に見られてるやーつ。まっ、めんどいし、その時間に乗ってやるか。



 「分かりました。4日後の13時ですね。場所はどこですか?」


 「場所については、こちらが馬車を用意させて頂くのでガブリエル伯爵邸にいらっしゃれば大丈夫との事です。」


 「分かりました。それとリリー王女。敬語めんどいので、これからタメ口で良いよね?リリー王女も私に対して全然崩して良いよ。ミーシャちゃんもね」


 「わかったよ。私のことはリリーで良いよ。みぃちゃんもそれで良いよね?」


 「はぁ、分かりました。私は口調は崩しませんがよろしくお願いします。」


 嘆息しながらってどんだけみぃちゃん呼び嫌なの?


 「では約束の時間に馬車を向かわせるからね。ご機嫌よう……今の私、すごく王女っぽくなかった?」




 いや、オメーは正真正銘の王女だろ。



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