H2



 ああ、今日も退屈で憂鬱な日だ。周りのレベルは低いし、何より向上心がない生きている価値のない無能の相手をするのは疲れる。


 誰か私の世界を変えてくれる程の人は居るのだろうか。いいや居ないだろう。でなければこの世界は停滞はしていないだろう。

 多くのニンゲンはただ毎日を受動的に思考停止をさせ生きる。自分から何かを変えるように努力している物は少ないだろう。

 ニンゲンは弱い生き物だ。誰かと同じ行動をしていないと気が済まない生物だ。自ら道を切り拓こうとする者は必ず異端視される。



 『異端』この言葉にニンゲンは弱い。努力していた人も異端を恐れて努力を辞めてしまうことだってある。

 所詮はただの足の引っ張り合いだと割り切っていれば問題にもならないだろう。けど私は割り切れない。

 もっと他の人が努力したら、もっと異端を受け入れるようになったら、誰か私の苦悩を理解してくれる人が現れるかもしれない。



 私だって人間だ。自分が異端であることに恐怖を感じている。だからまるで“フツウノニンゲン”の様に振る舞い同化している。だってそれが自分の身を守るのに一番楽なんですもの。皆と同じじゃないといけない。まるで誰かが全部操っているかの様に皆同じ行動をする。ただのお人形さんに成り下がってる

 けど、わたしの苦悩を理解し、私を救ってくれる人が現れるなら、私は喜んでフツウノニンゲンを演じる事を辞めよう。




     そんなニンゲン居るわけないですけど。








 「あら自己紹介がまだでしたね。私はフルール・ヤマト・ジャポニカ。ジャポニカ帝国の第一皇女です。まあこの大陸にある国ではないですが。こっちでは助けていただいたガブリエル伯爵家で社会勉強のためメイドをやっています。」


 不思議な子に出会った。私はあんなにも堂々としている人間は見たことがない。

 何があの子を突き動かすのだろう?何故あの子は自由に動けるのだろう?何で私は自由に動けないのだろうか?何故あの子にだけ自由に飛べる翼があるの?何で私には翼がないの?

 変わろうと努力してないから?それとも現状を受け入れきれてないから?ワカラナイ、ワカラナイ。あの子を観察していたら私がどうすれば良いか分かる気がする。


 今の私はまるで親が居ないと何も出来ない雛鳥の様だ。






 あの子と初めて一対一で会話した。そして気付いた。あの子は私なんかのマリオネットとは違う確固たる自我を持っている。



 「型に嵌った人生って楽しい?人々の期待に応え続けるのって楽しい?もっと自分の意思を持たないと人生楽しくないよ」



型に嵌った人生が楽しい?

そんなわけない


人々の期待に応え続けるのって楽しい?

正直言って苦痛でしかない。


もっと自分の意思を持たないと人生楽しくないよ。

分かってる。分かっているのだけど、もし自分の意思を持って、人々の期待に応えて続けない状態になったら……自分が急に無価値になる気がして怖いの。


 私は弱い人間だ。人から期待され続けた人生で急に期待されなくなったら、どう生きればいいのか分からない。故に私は擬態し続ける選択肢を取る。




 「何に悩んでるのか分からないけど、自分が正しいという答えを見つけることが、貴女には重要だと思う。

 皆はその答えに反対し、貴女を拒絶するかもしれない、けど私を含め少数の人は貴女を尊重しると思うわ。

 だから自信を持って。堂々としている女の子はとても可愛いもの。」



 

 初めて私の事を理解してくれそうな人を見つけた。私の正しいと思うことか……ワカラナイ。正解が本とかに書いてあったら楽なのに。

 けど心の靄が少し晴れた気がする。あの人なら、




       












        私を救って殺してくれるかもしれない


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さて『私』が女の子であることが判明しました。これで『私』だいぶ絞れると思います。分かるかなぁ?フフフフ。




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