電車詰め

 ごくり…

 ガタゴトと揺れ動く電車の中で緊張した様に生唾を呑み込むと、男はその右手をそっと伸ばした。

 伸ばした右手のてのひらに伝わる若い女の柔肌の感触が男を興奮させ、男は伸ばした右手を一心不乱に動かした。

 学生服を着た女の臀部を揉みしだく男の右手は狂った様に動き、まるで無数の蟲が蠢いているかの様だった。

「はあはあ…」

 男の吐息は荒くなり、欲望の込められたそのおぞましい微風そよかぜは女の首筋へと浴びせられた。

「いや……」

 女が発した蚊の鳴く様なその声は走る電車の中では誰にも届かず、唯一それを聞き取れたのは女に嫌悪感を抱かせた男自身だった。

「ふぅふぅ…」

 一分二分と時が刻まれるに連れて男の吐息はおぞましさを増し、それに比例して女の抱く嫌悪感は強くなった。

 女は男のその行為に抵抗する事はなく、気がつくと声を発する事もしなくなっていた。

「ひふぅ…ひふぅ…」

 下卑た吐息は激しくなり、男はその行為をエスカレートしていった。

 男の右手は相変わらず狂った様に女の臀部をまさぐりながら、時折それを止めては電車の揺れに合わせる様にして自身の下腹部を女の臀部へと擦り付けた。

 男が腰を動かす度に女の唇が「やめてください」と動いたが、それが音になる事がないと確信した男は「気持ちよくしてやるから」と言って女にもたれる様に下腹部を擦り付けながら右手を女の胸へと伸ばし、右手全体で女が女である証となる膨らみを味わった。

 やがて時が経ち、電車が駅に着くと女は男を振り払って駅へと飛び出した。

 男は女を追った。

 自身の行為のをしたいという欲望を抱えながら男は女を追いかけた。

 女が駅舎や最寄の交番へと駆け込んだところで素性を知られていない男には痛くも痒くもなく、それどころか女が男の行為を第三者に報告した後で更なる行為に及ぼうと考えて後を着けていた。

 しかし、男の予想に反して女は足早に駅のトイレへと入っていった。

 男にされた行為によって気が動転していたのか、女が入ったのは男用のトイレだった。

 そのトイレの周囲はさっきまでの電車内の人の多さに比べると異様な程の人気ひとけのなさだったが、男がそれに気がつくことはなかった

 女が男用のトイレへと入るのを見た男はその場で電車内での行為の続きをするべくトイレの中へと足を踏み入れた。

 そこには六人の男達が待っていた。

 女は男達から金を受け取ると自身を追ってきた男へ「あの人達が気持ちよくしてくれるってさ」と言って入れ替わりにトイレを出ていった。

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