第114話 ゴブリン総決戦!?
変わらずにちょこちょこと小集団を差し向けてくるゴブリン達。
俺はその陣容を見て奴らの作戦に気づく。
「初めはノーマルばかりだったが、今はゴブリンウォリアーが混ざり始めているな」
あれから根本らがグッスリ休んでいる間、俺はひたすら襲ってくるゴブリン達を潰し続けた。
全員が目を覚ます頃になると、送り込まれてくる小集団に進化した奴らが増え始める。
一応ただ無暗に特効していた訳でもないようだ。
相手がもう少し同じ位の強さだったら、持久戦の上に徐々に敵が強くなっていくというのはなかなか効いた事だろう。
しかし生憎と俺の魔法の前では、ノーマル集団もちょっと進化したクラスの集団も、潰す労力にほとんど差はない。
「うわぁ……。起きてみたら周りがえんらい事になってるわね」
「おう、樹里。疲れは取れたか?」
「うん、それはバッチリよ! てか大地は大丈夫なの?」
「この程度なら問題ない」
周囲にはゴブリン達の死体がそこかしこに散らばっているが、俺たちのいる場所から一定の距離には近づかせてはいない。
とはいえ流石にこれだけ数の数があると、臭いという意味でキツくなってきている。
「ちょっとこの臭いの中だと食欲もわかないッス」
「なら、ほれ。今日の朝飯はこれにするか」
俺はアイテムボックスから、長方形のブロック状のものを取り出す。
基本は焼き固めたクッキーのような感じだが、色々と栄養のあるものを生地に練り込んである。
某バランス栄養食を目指して作ってみたんだが、割とうまく出来たと思う。
「へぇ、なんか干した果物なんかも入ってるんッスね。結構美味しいッス」
「だろお? 味の調整には苦労したんだ」
「ねえ、これてカロリーメ……」
「しゃああらあああああっぷ!」
俺は樹里の言葉を遮るように声を荒げる。
「え? えっ?」
「よくは分からんが、それ以上言ってはならんのだ。ほら、これでも飲んでおけ」
そう言って俺は牛乳……とはちょっと違うがなんらかの畜産動物の乳を樹里に渡す。
個人的にはこのバランス栄養食との組み合わせは抜群だと思っている。
【このパサパサしたのも美味しいっすけど、おいらは肉系が食いたいっす】
【お前……。この腐臭漂う中よく肉を食おうなんて気になれるな】
【え? でも肉はいつ食っても美味しいっすよ?】
……こいつの言う肉ってワードが一々気になってしまう。
俺の従魔になったからにはもう二度とあの肉は食わせんからな!
【なら特別にお前には鹿っぽい奴の肉をやろう。だからいいか? 決して今後はあの肉は食うなよ?】
【あの肉って……ああ、人肉の事っすね。それは最初に聞いたんで分かってるっす】
念のため俺は改めてヴァルに釘を刺しておく。
俺たちがこうして呑気に朝食を取っている間にも、一度ゴブリンの小集団が襲ってきたが、接敵する間もなく蹴散らしている。
食事を終えた俺たちは、昨日と同じく交代制でゴブリンを蹴散らしていく事にした。
そこで俺はさっき気づいたことを皆に伝える。
「へぇ。そーいえば昨日まではノーマルばかりだった気がするわ」
「たまに進化したのは混じってましたけど、言われてみるとさっき襲ってきた奴らは進化した奴が多めでしたね」
【ってことは今日は昨日よりキツくなりそうっすね】
ゴブリンエリートに進化していたヴァルだったが、流石に進化クラスが多数混じり始めたら一人で戦うのは無理だろう。
「今日は二人一組にで当たった方がいいかも――」
とそこまで言いかけた時、俺はゴブリンの大軍が接近してきている事に気づいた。
「大地、どうしたの?」
俺の態度の変化にいち早く樹里が気づく。
「……いや。二人一組で当たらせるかと思ったんだが、どうもゴブリンの戦力を過小に見繕っていたようだ」
ゴブリン達の妙な動きに気づき、改めて索敵範囲を広げてみたらギルガグロスへと通じる方角以外の全方位から、押し寄せるようにしてゴブリン達が迫っている事を発見してしまった。
【どん位いるんっすか?】
【ざっと見た感じ十五万位はいるな】
【えっ? 親分がこれまで倒したのを合わせても、そんなに残ってるはずないっす。てか、その数だと多分全軍合わせた位の数っすよ】
ヴァルにも通訳して大軍に囲まれている事を伝えると、このような答えが返ってきた。
言われてみると、俺たちを取り囲んでる軍勢のゴブリンの中には、明らかに装備が貧弱な連中も混じっている。
それと、これまで戦場には出てくることがなかった魔民族まで動員されている。
【うへぇ。それはもう奥の手を出してきたっすね】
陣容からして、付近の町や村の住民を総動員しているんだろう。
ここ数日の小集団戦法でも、それなりの数のゴブリンは倒してきている。
まさに国民総決戦という趣になってきた。
俺はこの事を根本らにも改めて説明する。
一応これまでの言語学習の結果、部分的にはヴァルの話を理解出来てはいたらしい。
特に沙織は一番魔族語の習得が早い。
最近はネイティブから学ぼうとして、ヴァルと話している様子も見かけられる。
しかし沙織が魔族語で自分の事を「おいら」と呼び始めたので、慌てて修正したりという事もあった。
「……魔民族も混じってるっていうと、あの時の事を思い出しますね」
根本が眉間に皺を寄せる。
あの時というのは、初めての実戦でゴブリンに占領された村に行った時の事だろう。
「人質として連れてきたんでしょうか?」
「どうだかな。今回は前回と違って、元々自分達の支配してる魔民族だ。ゴブリン達にとっては、財産の一つなようなもんだろう」
「ヴァルに聞いた話ですと、魔民族の造りだす武具はゴブリン達のものより優れているそうです。確かに無暗に使い潰しはしないでしょう」
時折話してると思ってたが、そんな内容を話していたのか。
「という事は……普通に戦力として連れてきたって事ッスかね……」
「ちょっと大地! あんたもしかしてこれまでみたいにスパッと真っ二つにしたり、雷を降らせまくったりすんの!?」
俺個人としては別にそれでも構わないと思ってるんだが、魔民族が混じっているとなると樹里は反対するだろうな。
でもまあ、見た所魔民族は魔民族で固まってるようだし、ここは別の方法を取るか。
「同じ魔法だと芸がないな」
「そういう事じゃなくって! 魔民族の人達も一緒にぶっ殺すつもりかきーてんの!」
「襲ってくるんだからそれも仕方ないだろう」
「でも……ほら。あのリサールって人も仲間が増えるといーんじゃない?」
「別に奴に協力する義理もないだろ」
「うー、でも……大地なら……。大地なら、どうにか出来るよね?」
「まあ出来るかな」
「そう言わずにどうにかこうにか頑張って……って出来んの!?」
「んー、メイビー? イエス」
「それならそれでどうにかしてよ……。お願いっ!」
樹里も大分あっぷあっぷしてきたので、そろそろ救いの手を出してみる。
すると樹里がコントみたいな反応を返してきた。
ノリツッコミって奴だな。
俺はそんな樹里の頼みに応えるため、新しい魔法の構築に入るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます