リコットと少年
幼いリコットは、自分の部屋からぼんやりと外を眺めていた。
どれだけ長い間眺めていたのか分からない。
ふと、小さな男の子を見付けた。
木の陰に隠れて、周りをきょろきょろと見回している。
あの子がいる!
一目散に駆け出していった。
秘密の友達。
胸がどきどきと高鳴っている。
外の景色に溶け込むように、男の子は佇んでいた。
この頃、よく隠れて会っているのだ。
年は私より少し上だろうか。
彼が動く度に空色の髪がぴょんぴょんと揺れた。
大きな瞳は群青色に輝いている。
服はぶかぶかの緑ポンチョだ。
『来てくれたんだ』
私が話しても、その男の子は困ったように微笑むだけだ。
『何してるの?』
『……お母さんを、待ってる』
その男の子は、女の子のような軽やかなソプラノで答えた。
『じゃあ、私と一緒だね』
どうしてだろう。
初めて会った日から、私は男の子が気になって仕方がなかった。
男の子の笑顔が見たくて、もっと話をしたくて、男の子のことばかり考えてしまう。
これが、恋なのだろうか。
二人は自然と仲良くなった。
男の子はいつも花をいじって遊んでいた。
私も暇な時間を見付けては男の子へ会いに行った。
男の子が花に詳しいから、私も花について勉強した。
どこで何をしていても、その男の子が気になって仕様がない。
夜は寂しくて、どこかにいないか窓からずっと姿を探した。
『ねえ、お屋敷の中で遊ぼうよ。ずっと外にいてもつまんないよ』
そう言っても、男の子は困ったように笑うだけだ。
『お母さんを、待ってるから』
それでも、どうしても私はその男の子と一緒にいたかった。
その日も、二人で花をいじって遊んでいた。
私は男の子にシロツメクサの冠を作り、男の子は私にヒナギクの首飾りを作った。
『あのね、ここにずっといてほしいの』
急な言葉に、男の子は首を傾げて私を見つめた。
私は母上にかつてそうしていたように男の子の胸に飛び込んだ。
『大人になっても、ずっとずーっと一緒にいたいの』
男の子はみるみる内に顔を真っ赤にして俯いた。
『どうしたの、顔赤いよ? 具合、悪いの?』
私は男の子の顔を覗き込んだ。余計に顔が赤くなって。
そのまま私は突き飛ばされた。
『え……』
『ご、ごめん』
男の子は一目散に駆けていった。
私は後ろ姿をただ茫然と見送るしかなかった。
立ち尽くすことしか出来なかったのだ。
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