運次第の宇宙旅行⑥
廊下は隠れる場所が少ないが、幸い小さなくぼみで二人が隠れるには十分だった。
「これからどうするの・・・?」
「とりあえず巨人がいる間は下手に行動はできない」
「そうだね・・・。 二人が無事だということを祈ってロケットでも探す?」
「その方がいいかもな」
全員捕まればもうどうしようもないのだ。 苦渋の決断ではあるが、二人はロケット探しを始めた。 そこでまた地震が来る。
「地震? 何か地震多くない?」
「ただ巨人が歩いているだけかもしれないけど。 まぁ、それにしては揺れが大きいな」
しばらくすると揺れが収まった。 巨人がロケットを持っていった方向を思い出せば、案外簡単に見つけ出すことができた。
「あったぞ! おそらくあそこだ」
ここは他の部屋とは違いとても明るかった。 ロケットの一部が見え机上に上りロケットを見る。 しかしそこにあったのは二人が知るロケットの姿ではなかった。
「ッ・・・! どうしてこんなことに・・・」
ロケットはバラバラに壊されていたのだ。 自分たちで組み立てたため、全てのパーツに見覚えがある。
「酷い・・・。 完成させるまであんなに苦労したのに!」
「そうだな・・・」
―――・・・ん?
ただ天都はロケットの残骸を見てあることに気が付いていた。 ただその理由が分からないため恵人には言わなかった。
「一体巨人は何を考えているんだろうな。 ただ興味本位だったというだけなのか?」
「ねぇ、もしかしてもう地球には帰れないんじゃ・・・?」
「・・・」
その時また地震が来た。
「何だ? また地震!?」
「わッ・・・!?」
片足を預ける状態でいた恵人がバランスを崩し机から落ちそうになる。
「恵人!!」
手を伸ばすがもう遅かった。 恵人は机から落下していく。
―――俺としたことが・・・ッ!
ただの机でも巨人用ともなれば天都たちにとってはかなりの高さがある。 地球での建物の二階や三階よりも余程高い。 このままだと恵人は間違いなく死んでしまっただろう。
「・・・あれ・・・?」
しかし恵人が地面に激突することはなかった。
―――どういうことだ・・・?
巨人が恵人を救ってくれたのだ。
「貴女は・・・?」
恵人が見上げた先には、先程まで見ていた巨人とはまるで違う小さな人間。 ただ二人からしてみれば明らかに大きく、何故かよろけている。
―――巨人の子供か・・・?
―――思えばここは子供部屋のようにも思えるな・・・。
―――子供でもよろけるって巨人が歩いたせいじゃないのか・・・?
揺れが収まると恵人は天都の隣へと返された。
「助けてくれてありがとう!」
恵人は大きな声で礼を言う。 巨人の子供も笑って何かを言っているようだが、違う言語が分かるはずがなかった。
「恵人、大丈夫か?」
「うん、平気」
「悪い、俺が付いているばかりに・・・」
「突然の出来事だったから仕方がないよ。 それよりもどうして助けてくれたんだろう? もしかしてロケットを分解したのは・・・」
「いや、この子じゃない。 この子の身長的に机のど真ん中にあるロケットには手が届かない」
「そっか・・・」
「とりあえず敵対心はなさそうだな」
そう思ったのも束の間、もう一度巨人は恵人を手の平に拾い上げた。
「えっと・・・?」
恵人は困惑し、天都も警戒するが今更どうすることもできない。 巨人は近くにあったピンク色の小さなドレスを手に取ると、恵人の服を突然脱がし始めた。
「!?」
いきなりの光景に天都は目を背ける。 しばらくしてから振り返ると、そこにはピンク色のドレスを着させられた恵人が巨人の手の平の上に座っていた。
―――着せ替えた・・・?
―――着せ替え人形だとでも思っているのか?
恵人も何が何だか分からず困惑しっぱなしだ。 巨人はしばらく恵人を見てその姿を堪能すると恵人を持って扉の方へと歩いていった。
「あ、おい! 待て!!」
その声が巨人に届かくはずがない。
「天都くーん!!」
恵人も叫んでいるが巨人は止まってはくれなかった。 抵抗もできず恵人は巨人によって連れ去られてしまった。
「嘘だろ・・・」
天都は一人取り残され途方に暮れた。
―――俺だけになったのか?
―――俺だけでどうしろっていうんだよ・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます