第8話 人気者気持ち良すぎだろ
「今日の配信はここまでにしたいと思います! 来てくださった皆さん、ご視聴ありがとうございました!」
『おつ!』
『おつかれさまー!』
『楽しかったよー』
『また見に来る!』
『初配信とは思えないクオリティ』
『気に入ったぞよ』
あれから、1時間ほど配信しながら狩りを続け、視聴者やファン達の温かいコメントで幕を閉じた。
いきなりファンが急増してめちゃくちゃ興奮したが、なんだか浮かれている様子がバレるとダサイ気がしたので、あくまでも落ち着いた様子で配信を行うようにした。
「ふぅ……。めちゃくちゃ魔力使ったなぁ」
視聴者がいないのはとても悲しいが、人が来てくれるということは常に多数の人に見られるということ。常に問題発言や変な行動をしないよう意識をしなければならないので、結構疲れた。
ある程度強い魔物を4体ほどしか狩っていないのにもかかわらず、配信映えのために能力をたくさん派手に使ったので、もう魔力が残り少ない。
魔界の魔物が強いこともあり、かなりコスパの悪い狩りになってしまったが……配信はその分かなりの盛り上がりを見せた。
その証拠にファン数はさらに増え、今ではもう89人となった。めちゃくちゃ嬉しい。嬉しすぎるんだが。
「人に評価されるのって、こんな気持ちいいんかよ……」
あまりの嬉しさに、ついつい口角が上がった。
人間界にいた時はどれだけ頑張ってもファンなんて獲得できなかったのに、環境が変わっただけでこれほど簡単にファンが手に入るなんて……。
ていうか、魔界では俺みたいな異形系のスキルが人気かもってバカみたいな予想、まさかの大当たりだったな。
魔族は先祖が魔物だと言われていることもあり、魔物への嫌悪感がないどころか、魔物のことを好きな人もかなり存在するようだ。
もちろん、殺す対象ではあるらしいのだが……よくわからん。民族的な問題や価値観は、外部の人間には理解しにくいものだ。あまり、深く考えないようにしよう。
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さて、今日はボア肉のステーキを食べながら、配信のコメントをじっくりねっとりと見返していこうかな。
『火妖かっけぇー! 火系もっと使って欲しい!』
『この魔物相手なら、光系もおすすめですよ!』
『てか、さらっと全属性使えるのなんなんwww』
『万能すぎワロタ』
『見た目もいいし最強やろ』
『羨ましいガチで』
「魔界ではこんなスキルが人気だなんて、思いもしなかったなぁ」
【火妖の腕】
燃え盛る腕が薪に火をつけていく様子を眺めながら、しみじみそう思った。
人間界には虫や犬を食べる配信をしている人や、謎のヌメヌメした触手が好きな人はいたのに、俺のスキルは嫌われっぱなしだったからなぁ……。
「虫やヌメヌメ触手に負けるって、改めて思い返してもひでえな……あ!」
そういえば、もうEランクになったんだった。この前FランクになったばっかりなのにもうEランクだなんて、現実味がなさすぎてすっかり忘れていた。
特典を得られる頻度が高すぎて忘れてたよぉ〜。なんて、数日前には絶対に言えなかった事だ。それもこれも、魔界と魔族のおかげ。
怖くて苦手意識のある魔族達だが、ファンになってくれた魔族たちは、丁寧に扱うようにしようと改めて思った。
「よし、早速特典を確認していくか」
システムを起動させ特典を確認すると、Fランク特典と同様に2つの特典を得ていた。
1つ目の特典は、定番のスキルの能力制限の解除である。これでFランクに加えてEランクの魔物にも変化できるようになったな。
「あれも使えるようになるし……あとあれもか。じゃあ、それとこれを組み合わせたら……」
スキルの制限解除は、シンプルに戦力増加につながるからとても嬉しい。
新たな魔物の組み合わせにより、今まではできなかった戦略を取ることも可能になってくるしね。
それから、迫力のある魔物に変化できるようになることで、配信の見栄えも良くなり視聴者も増えるだろうな。
「やっば。早く配信してぇ……」
考えるだけで楽しみである。やっぱ報酬の確認っていいよな。モチベーションが上がるし、何より楽しい。
さて、もう一つの特典も見ていこうか。
あとがき
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※2/26加筆修正いたしました。
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