第57話 視聴者の急増と怪林病
毒龍の死体をストレージにしまった後、残りのモンスターも同じように処理した。
「さて、もう残りのモンスターはいなさそうですね。よし! これにて、20階攻略完了です! みなさん、今日は長い中ご視聴ありがとうございまし……」
締めの挨拶と共に、配信を終わろうと配信画面を開く。すると、1000人程だったはずの視聴者数が、いつのまにか爆発的に増加していた。
「……えっ!?50000人!?」
何があったのだろう。まさか、炎上した?いくら魔界でも、このせこい戦法はダメだったか?
やらかしてしまったかと、ヒヤヒヤしながらコメントを表示させる。状況を理解するなら、コメントを見るのが1番手っ取り早いからである。
恐る恐るコメント欄を覗くと、何やら騒がしい。コメントを読み込んでいくと、まるでスパムのように『毒龍の血を売ってほしい』とのコメントが殺到していた。
ふむ、どうやら炎上したわけではなさそうなので一安心。
しかし、油断は禁物だ。『金がないので格安で売って欲しい』や『娘のために安値で売ってくれ』など、こいつら乞食かよ! と思わせるようなコメントが相次いでいる。
これの対応次第では、本当に炎上してしまうかもしれないからな。ひとまずこうなった事情を聞いて、それから判断することにしよう。
「えっと……長い間コメントを見ることができず、すみませんでした。
いきなり視聴者数が増えていること、毒龍の血を売って欲しい方が大量にいることなど、ちょっと理解が追いついていない部分があります。
コメントを読み返して状況を理解するので、少しお待ちください」
視聴者達に一言告げてから、コメントを遡って読み始める。
えーと、この辺から読み始めれば平気そうだな。
なになに、『娘が怪林病で苦しんでいる』『怪林病の治療薬を作るため、毒龍の血を分けて欲しい』『お願いだ。毒龍の血だけが足りないんだ。このままだと弟が死んでしまう』
ふむ、だいたい状況が掴めてきたな。どうやら、怪林病という病気があるらしい。なんでも、放置していると身体中が腐り始め、やがて死に至ってしまうらしい。
そして、その治療薬を作るのに毒龍の血が必要なのだとか。
だが、毒龍は討伐が難しい龍系統のモンスターなのに加え、そこまで辿り着くのも大変な毒系統のダンジョンに生息している。そのため、素材が全然出回らないらしい。
そこで、毒龍を無傷で討伐した俺のことが掲示板などを通して広まり、毒龍の素材を売って欲しい人たちと野次馬が配信を見に集まってきたのか。
なるほどな。治療薬の元になるなら安値で売りに出すのは全然構わない。
しかし、ショップに売りに出すと、買い占めや転売ヤーが蔓延る可能性があるんだよな。そのせいで、必要な人たちの手に届かなかったら意味がないし……どうしたものか。
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