聞いてほしいの!
「貧血ですから、しっかりと休んでくださいね」
「わかりました。」
「それと、しっかりと寝れていないみたいですけど、ここにいる間はしっかりと寝てくださいね」
「はい…」
気づかないうちに、悩みから食事の量が減り、貧血で職場で倒れてしまったのだ。
あの出来事があって、二週間…
うまくいっていないことばかりだ。
「大丈夫?仕事もガムシャラにやってたみたいだけど…」
「そうですよ、先輩。何か悩んでいるのなら、僕が聞きますよ」
「ありがとう、二人とも」
「それなりに長い付き合いだから許す」
「僕は好きできていますから」
「あはは…」
会社の荷物をもってきたのは、同僚で長い付き合いのミクと後輩の男子君だ。
あたしの好意があからさますぎて、さすがに少し引いているのだけれど、旦那と違い隠し事をする感じではない。
ああ、この子と付き合えば、結婚すればよかったんだろうか?
そんなことを思ってしまう。
あー、ダメダメ…
何弱気になってるんだろ。
でもミクなら話を聞いてくれるんだろうか?
そう思ってチラッとミクの方を見ると、何かを察したのだろうか、手をポンと叩いた。
「あ、そういえば、○○君。部長が明日の取引先のこと話があるって言ってたかも」
「そうなんですね。それでは先輩、しっかりと休んでくださいね」
「あ、ありがとう」
後輩君が出ていくと、ミクと二人だけになった。
でも言えずに沈黙が流れる。
その空気に、ミクはため息をつくと言う。
「それで、旦那君とは喧嘩したの?」
「え!どうして?」
「あのねえ、さすがに気づくわよ。いっつもだったら旦那君はいつもこんな感じでってかなり惚気てるじゃない!」
「そんなに惚気てないよ」
「いや、惚気てるね。本当に私らが胸焼けするくらいには惚気てるから」
「そ、そんなに?」
「そうよ。だから何かあるなら話なさい。このままあのうざい○○とくっつくのも面倒だから」
「えっと、誰だっけ?」
「ほんとにあんたは…旦那君以外の男には興味もないのね」
「それは…」
だって、一番好きな人だから…
だから、こんなに悩んでいるんだから!
と言いたいところだけれど、それを言ってしまえば、また惚気ですかと言われてしまってちゃんとした相談ができそうになかったから、あたしは話すことにした。
「えっと、あたしとカイトは月に一回はお互いの好きなことをしようってことで、あたしはツーリングに行ってたのね」
「へえ、束縛もしなくて、嫁の趣味にも寛容ってかなりいい旦那じゃない」
「わかってるよ、でもだからわからないのよ」
「何が?」
「旦那である、カイトが女装している理由よ」
「女装?」
「そう、女装よ。だって、女装するっておかしいじゃない!」
「どうおかしいの?」
「それは…」
だって、男が女の人の恰好をしているってことは、男として扱ってほしいのじゃなくて、女性として扱ってほしくて、そもそもあたしとの結婚自体も偽装しているものじゃないのかって…
そう言葉にしようとしたけれど、うまく言葉にはできなかった。
それは、あたしがこれまでしっかりと女性として大事にされてきたからだった。
「ねえ、それっておかしいことなの?」
「え?」
その後にミクに言われた言葉であたしは決心した。
ちゃんと話をしようと…
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