「待った」はもう使い切っている

 いま群像劇を書いている。

 群像劇を書くのは初めてなので毎日「あーでもないこーでもない」と手探りで書いているのだが、これが面白い。


 3人の主要人物を軸に進んでいくストーリーが今日320枚を超えた。

 これでようやく全体の40パーセントといったところか。このままだと700枚近く――もしかしたら700枚を超えるかもしれない。

 これはあくまで予想&初稿なので、最終的には450~500枚ぐらいで収めるつもりだ(新人賞に出すことを考えると500枚超えは長過ぎる)。普段が300~350枚で長編を畳む人間なので、正直450枚でもギリギリだと思っている。

 視点が3つだからといってボリュームまで通常の3倍にする必要はないのだが、まだ初稿だ。初稿はとにかく風呂敷を広げまくればいいかと、いまのところは書き惜しみをしないよう心掛けている。

 

 初稿ってなんだ ふりむかないことさ


 削るのはあと。

 で、削るときはとにかく削る。


 推敲ってなんだ ためらわないことさ


 最後は「よろしく根気」の精神。

 12月に応募予定の作品なので締め切りはまだ先だが、僕がいま書いている作品は新人賞の応募作ではなく、破格のデビュー作だ。日々そういうつもりで書いている。


 2年半前だったか。手相占いをしてもらったとき、2022年~2023年にかけてが勝負の年と言われた。2023年の8月。ここが一つの節目になるそうだ。

 つまり12月の新人賞に出す→春先に結果発表と考えると、いま書いている作品が勝負作になる。だから、締め切りは先でもあまりのんびり気分ではいられない。

 

 ……とはいえ、ここで「毎日命がけで書きます!」と変に自分を痛めつけようとしたり、「傾向と対策を練って書きます」と小賢しいことを考えたところで迷走するだけだろう。

 僕がいま一番怖いのは、大勝負の最中に自分を見失うことだ。


 結果を求めて無意味に焦ること。

 周りの歩みと自分の歩みを比べること。

 近道や最短距離といった甘い言葉。

 

 この3つで2年間無駄にした。

 ただ、その憑き物も最近ようやく落ちたので、これからは大丈夫だろう。

 そういうわけで今回のエッセイは、僕のバイブル――『虚空遍歴』(山本周五郎)の名台詞で締めようと思う。


【男が自分の仕事にいのちを賭けるということは、他人の仕事を否定することではなく、どんな障害にあっても屈せず、また、そのときの流行に支配されることなく、自分の信じた道を守りとおしてゆくことなんだ】

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