第4話-プロローグ編-

ぐっと身体を伸ばして深呼吸をする。

朝一番の空気も好きだけど、俺は埃っぽさの空気も好き。息を吸うと鼻から口に入る砂。


舌の上がじゃりじゃりしていて不快なのに慣れればいっそ愛おしい。



ダンジョン最高!


『さてさて取り敢えず最下層まで来たし、やっぱボス部屋入りたいなー』



両手に黒の手袋を付け、寝袋をリュックに押し込み、残った食材をタッパーに入れた。あぁ、この世界にはタッパーが無かったから前世の記憶を活かして作ったのだが、


これが中々便利。肉と野菜に分けたり。味の似たような物でまとめたり、とか。



薬草採取にも持っていれば使えるし、保存もバッチリ。あれ、このタッパー無敵では…?



そう思う今日この頃。


前世の日用品をそのままこっちに持ち込みたい、と思いながらも自作しちゃえば割と解決できちゃう説。買えないなら作ればいい!だな。


うんうん。っと、1人納得し自分が仮眠…いや熟睡した場所を片付けてから服についた砂埃を手で払う。



通路沿いに寝ていたせいか、髪の毛すらも砂っぽい


あと少し歩けばボス部屋に着くのだが…、




『その前に《浄化》』


自身の身体に手を当てれば、白い光に包まれ。その瞬間、風呂に入った様なスッキリ感を味わう。


便利だなぁ…生活魔法


『後はボス倒すからか、《身体強化》』



お、…っと、何も考えずに詠唱したが急に軽くなる身体にバランスを崩しつつ


すぐに感じた違和感は慣れてしまう。



一言で言うなら無重力、みたいなそんな感じ。


1人でボス部屋に入るなんて死に急ぐ様な物だし。だからこそ、使える魔法で自身をサポートしないと勝てないのだ。だってボスだよ?いわゆる、ダンジョンのラスボスだよ。



宝箱あるー!なんてテンション上げて踏み込んだ場所がボス部屋なんて事はザラだが、


ボス部屋ですよ。みたいな部屋にいるモンスターもかなり強いわけで。前者で勝てない理由は大体、2パターンに分かれて、



罠に引っかかってテンパって死亡するか。ただ単に、実力不足な。ぶっちゃけ、トラップが仕掛けてあるボス部屋は…そこまで強くない


ただ油断している状態だからキツイってのはあるかな





んで、ここはボス部屋だぜ!っていう豪華な扉付きのボス部屋のモンスターは…


控えめに言ってえげつない。瞬きしたら首と胴体がさよならしているなんて事は少なくない。




『よぉし気合い入れてくかー!!!』




薄暗いダンジョンの中、


元気な声だけが響き渡った–––––––––––––––












雷神龍ナルハタタヒメ。雌の古龍。


口の中に雷を蓄電し放出する。雷を自在に操る龍であり、モンスターの中では2本の指に入ると言われている。



『えーっと、ここのボスモンスターは…って嘘だろ!?雷神龍!?え?…まじかっ。


わぁあああ油こってりお肉!!!さぁ行こうかっ!お肉が待っている♡』



遠くの生体まで見極める邪眼を使い、ボス部屋まで視れば待ち構えていたのは大きすぎる龍だった。


俺の気配を察してか、こちらをジロリと睨め付ける




その左右の瞳は片々で。


肉食獣の獰猛な瞳は淀んでいるのに、美しいとすら思えた。


『あぁ。うん最高!目ん玉って煮ると美味しいんだよねぇ』




脳内に浮かぶのは自身が惨殺される姿…ではなく


如何に美味しく料理し、食べるか。である。


よく見れば口元には涎がタラリと垂れていた。





お前の思考回路に危機感はないのか。そう突っ込む者は残念ながら…居なかった















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