閑話??はかつての面影を感じる

《すみませんもう1話だけ》


「そこ!もっと腰を低くして!」

私は貴族学園で格闘を教えている。

「相手の関節を外さない程度に抑え込むような形で」

「はい!」


今教えている生徒は執事コースと呼ばれる生徒。中には何人か女子生徒もいる。

みんな優秀な生徒ばかり。


「気をつけ!礼!ありがとうございました!」

生徒たちはみんな仲が良さそうだ。

あいつにもこんな友達がいたら少しは変わっていたかもしれない。


私は生まれ変わる前の記憶を持つ。

転生と言うらしい。

転生前はおじいちゃんだったから分かんないが今は転生して50年、ちょっと若いくらいだ。

転生者ってこともあってこの学園に採用された。妻にも一応言ってある。


転生前はボクシングのチャンピオンだった。

自分だけの施設を作って、そこで引退してからも強いやつを育成していた。

ある日、街中を歩いていると

「痛い!」

「やめるわけないだろうがよ!」

ただ一方的に殴られているやつがいた。

一応そいつら黙らせて逃げていき、

俺は

「お前強くなりたいか?」

と聞いた。すると

泣きながら

「僕は強くなんかなりたくない。ただ守れるようになりたい」

初めてだった。

誰でも強くなりたいと思って俺のところに来るやつが多い。


けどこいつはある意味純粋だと思った。

違った視点に惹かれ、鍛えることにした。

簡単な関節技から空手、ボクシングはちょっと殴るのに抵抗があるのか才能がなかったが、それ以外は俺より強くなっていた。


だがあいつはいじめられ続けた。

理由を聞くと

「僕が見返してたら他の人が狙われるかもしれないから」

と言い出した。

夜遅くまでバイトしてて、学校ではいじめられる。

辛すぎる毎日でせめてここだけは居場所にしようと思った。


それになりつつあった日、突然電話がなり響いた。

「え?」

聞きたくなかった。

俺は直ぐに病院に向かった。

老人であろうが関係なく猛スピードで。


着くとあいつは顔を布で覆われていた。

「なんで…なんでだよ!」

何回も揺すったけど反応がない。

それが思い知らされる。


親はただ携帯をいじってた。

俺は腹が立って、

「お前らがいなければあいつは幸せになれた」と一言言い消えた。

それから俺はみるみるおじいさんになっていき、やがて施設も経営するのが難しく閉め、

どんどん衰弱していった。


「あいつは元気かな…」

この50年間ずっとそんなことを考えている。

俺は60歳になったらあいつを探す旅に出ようと思う。

もしかしたら転生しているかもしれない。

この世界をくまなく探す。

妻も賛成してくれているし、子供も成人している。


翌日、今日は学園が貸し切られ、第二王女様が結婚する。相手は元公爵家の三男だとか。

身分関係なく接していた第二王女様には好印象が持てていたので心から祝福した。


花束を持った花嫁と手を繋ぐ新夫。

俺は彼の姿を見た瞬間、懐かしく思ってしまった。

「あれ?どうされたんですか??先生」

「すまん、ちょっと席を外す」

あいつであるはずがないのにそんなことを考えてしまう。

あいつも幸せでいて欲しかった。

誰かと結婚して幸せな家庭を持って欲しかった。

「くそ!くそ!」

壁を殴っても響き渡るだけ。

俺はもう戻れず、体調が悪くなったといい、早めに帰った。


あいつの面影を感じたくはない。

変にあいつがいると勘違いしてしまうから。


《閑話の時に新キャラが出る場合は??がつきます。2章の中でも普通に新キャラは他にも出ますが、閑話の時はネタバレ感があるのでこうさせてもらいます》


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