第7話氷より冷たい家族
家の前に着くとメイドがいた。
「お帰りなさいませ。ご主人様がお待ちです」
「はい」
メイドも丁寧に対応している。
「入れ」
「失礼します」
また家族が全員揃っていた。
「よー弟。カナリア様にさっそく嫌われたか?」
「クルジェ。あまりレンを煽ると犯罪になりますよ」
「そうだった。けどまだ結婚してないしいいだろ」
クルジェ兄さんは前世でいじめてきたやつとちょっと似ている。
いじめるやつはだいたいこういうやつなのかも。
「今日お前を呼び出したのは、カナリア様と予想以上に上手くいっているからだ」
「本当。あなたはすぐに捨てられると思っていたのに」
さっきまで犯罪とか言ってた人が急に何を言い出す。
「お前、王からも手紙が来ていてなだいぶ信頼関係が築けているのだとか」
「ありえねーあんな美人なカナリア様とお前が?不釣り合いすぎだろ」
と言うのはロート兄さん。
確かに世間から見れば、三男と王女。
位も違う。やっぱりそう考えると…
「そうなのかな…」
「当たり前だ。結婚すればお前なんてすぐに捨てられて新しい男を作るだろう」
この人も愛人を何人も作ってる。
この国では王族では正式に何人かパートナーを作れる。
それ以外の貴族は愛人と呼ばれ、奥さんにバレると離婚というのが多い。
が、こいつは悪知恵で上手くやっている。
「まぁそれでお前にはカナリア様から機密情報を教えて欲しい」
え?カナリア様に?
「最近は俺らの役に立てているのだから光栄に思え、よ!」
「う!」
お腹を殴られる。
「顔面に殴ると痕が残ってバレるかもしんねーからよ」
「やるなら影でやれよ。とにかくお前は調子に乗りすぎだ。三男が図に乗るな」
「ごめんなさい」
それからあれこれあいつらが話し出して、
結局この1週間はせめての償いとしてまたメイドと同じ仕事をさせられることになった。
もちろん拒否できない。
3日がたった。
昨日は掃除が甘いとかで奥様にムチで背中を叩かれた。
痛かった。
思えばこうやって恐怖感を植え付けられた。
時々カナリア様といた時間が夢かと思ってしまう。
後4日か…
もしかしたら何か理由をつけて延長してくるかもしれない。
「あ!」
パリンッ!
奥様の花瓶を割ってしまった。
「あんた!何してるの!」
「す、すみません!」
「お仕置き。脱げ。昨日は100回だけだったけど今日は気が済むまでやるわ」
叩かれる。痛い。
「誰にも必要とされていない偽善者が!」
この人は昔僕が爺やと小さい男の子を助けた時からそう呼んでくる。
今日もお父様が
「カナリア様はお前みたいな貧弱な男より強い人が好きだから、すぐに捨てられるわ」
と笑われた。
確かに今は優しくてもだんだん貧弱な僕なんか相手にしてこない可能性だってある。
自分より弱い人といて楽しくなくなるかもしれない。
その時になったら平民にでもなって爺やの喫茶店で働かせてもらおう。
考えていてもやっぱり痛い。
いつ終わるのか分からない。
その時、
またパリンッと音がしたがそれは右からで
「レンくん!」
窓割って入ってきたのはカナリア様。
「遅くなってごめん!」
この人になら捨てられてもいいのかもしれないと初めて思った。
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