仔鳩と吸血鬼
「せっかく作ったブランド、何で売却したんだ?」
「ネタのストックが尽きたし、趣味でもなかったから」
「ドライすぎて草枯れるよ。いや、でも色んな所からオファーきてたんだろ?」
要するに、ストックが切れたという事だろう。女性向けのバックや小物、食器。花やフルーツをモチーフにしてクラシカルとポップが程よく融合されたデザインは、幅広い年齢層の女性の間でブームになった。
ピジョンが唐突に始めた、彼女の後見人が後援したブランドは一躍有名になった。ミハイの母親も大ファンで新商品や自分のオリジナルデザインの食器を頼んで、飾っていた。途中まで気が付かなかったミハイは、着々と増える少女趣味なそれらにゲンナリとしてピジョンに愚痴を言った。
「それ、私のデザインだよ」
その答えに、泣いて謝罪した。ミハイも検索したが、どう考えても彼女の好みではない気がしたが、デザインの才覚と本人の好みは別なのかと思っていた。女性向けのブランドの推移には詳しくないので憶測ではあるが。しかし、それをピジョンはあっさりと大手の会社に売却した。勿体ないと誰もが思っただろうし、売却先の相手も「今後もデザイナーとして働いてくれないか」と懇願したらしいが「本業に専念する」と断っている。
忙しくなったのと飽きたのだろう。思いついても、本人はそこまで好きではなかったのかもしれない。
異世界転移が珍しくない世界に巻き添え召喚!(6/12更新) 狂言巡 @k-meguri
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