第8話

○デーヴィト卿の喜び


 国境近くの森の中に、隠れるように建つ屋敷があった。

元は貴族の屋敷だったが、流行病で跡継ぎが亡くなったため、城からの指示で、残った一族は住居を移し、この屋敷に軍本部を置くこととなったのだ。

食糧や武器、備品などを備蓄管理しながら、軍隊を指揮し、後方から支援していた。


 デーヴィト卿が、王家の軍隊を率いて、到着すると、早々に、参謀候補の兵に会うこととなる。

まずは、ブレーンを固めることが大事だった。

隊の中から、これからの作戦計画をたてるためにも、ジェネラルの参謀としても、必要な人材だということで選ばれた若い兵士と面会した。

機敏な動きと先を見通す能力を備えた有望なものだと伝え聞いていた。


 机を挟み向い合う。そこには、背が高く、凛々しく整った顔立ちのまだ少年の風情の残る人物が立っていた。。

まっすぐにこちらを見つめ

「初めまして、パート・ジョーンズ・アイビンです。お会いしたかった、光栄です」

と挨拶をする。

その名前を聞いたとたん、デーヴィト卿はすぐにわかった。

驚きと喜びで顔がしわくちゃになる。


パートは、兄エドワードの息子だった。

エドワードの面影がある。


ここで会えるとは。

周りは知る由もない関係だった。

パートが秀でた能力を持っていたからこそ、ここで、このように、ストレートに会うことができたのだと喜びに震えていた。


 過去の経緯は、守秘義務があるため、詳細は語ることはでぎないが、両親は安全な場所で静かに暮らしていると、近況を少し話した後、自分は、叔父でもあるデーヴィト卿を支えて、この地で戦いたい、ときっぱりと言った。


 実は、デーヴィト卿は、3年前、妻に先立たれ、子どもはいなかった。

再婚をすすめられていたが、気が乗らず、1人で暮らしていた。

たぶん、そのことも考慮に入れ、エドワードが自分の元へ、パートを送ってくれたのだと悟っていた。

立派に育った。

心強い。有り難いことだ。

 

しばらく話が弾んだ。

今後の戦いのことを考え、バートの希望も考慮に入れ、まだ若いが参謀として、ここで力を発揮して欲しいと頼むデーヴィト卿だった。


思えば、様々な出来事があった、と

デーヴィト卿は遠い目をする。

過去のことは変えることはできない。

いまさらどうすることもできないのだから、前を向き、これからの未来に対処するしかない。

そんなことを思いながらバートを見つめていた。


しかしそれも束の間のこと。

ここは国境の戦場

次の知らせが届く。


 デーヴィト卿は、パートを入れ、その他、候補の人材で、参謀が決まれば、まずは、参謀会議で話し合いをすすめ、決まったことを兵におろす。

早急に命令系統を整える

これからの手順を考えていた。

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特別な種族 聖女の章 野棘かな @noibara

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