第6話
○まだわからない
「ジュリア」
叔父デーヴィト卿が呼んでいる。
「はい、こちらにおります」
玄関へ行く。
そこには、羽飾りのついたベレー帽を被り、赤と黒の軍の礼服を着て、マントを羽織るデーヴィト卿が立っていた。
早朝から早馬による通達を、アルバートが受け取り、慌ただしく動いていたのは知っていた。
「これから母君に挨拶に行き、すぐ城に戻り、翌日、出軍し国境へ行くことになった。レイラのことはよろしく頼む」
「はい。わかっております。ご心配なさらず、お気をつけて」
「お任せください」
アルバートととも見送る。
敬礼をすると、振り向くことなく馬を走らせ行ってしまう。
国境付近では、また隣国に動きがあり、第1部隊が攻防を繰り広げていた。
そこに軍の統括である叔父デーヴィト卿が、ジェネラルとして第2部隊とともに加勢することが決定した。
もちろん前線ではないので、余計な心配をすることもないのだが、あまり良くない状況だとわかる。
距離はあるが、隣の領地に建つ屋敷におばあさまが住んでいる。
生まれた時から両親は居らず、母の顔も父の顔も知らないまま、おばあさまに育てられ、物心ついた頃、レイラがやってきた。
生まれてまもない赤ちゃんだったレイラをおばあさまを手伝い面倒を見た。それは、愛らしいレイラに癒される充実した日々だった。
やがて、レイラが6歳になると、城からの通達があり、隣の領地に立つ今の屋敷に2人で移り住み、家庭教師としてアルバート、そして、レイラの影としてフレッドがやってきたのだ。
その後も、ジュリアは、この屋敷での生活とは別に、おばあさまの元に通い、様々な教えを受ける。
アルバートは、数日滞在した後、城へ戻る。今後のことを話し合うための最高会議に参加するためだ。
そこで、遅れている事案が決まり承認されるといよいよ扉が開かれることになる。
遅れている事案とは、、レイラのパートナーを決定することだ。
人選は、長老たち最高議会が様々な資料に基づき決めるはずだったが、なぜか遅々としてすすまないのだ。決める気があるのだろうかと疑う程だ。
過去の儀式に関わった長老もいるというのに、スムーズに決まらないことに、アルバートは、不信感さえ感じていた。
なぜそんなに待っているのかというと、それまでに覚悟を決める必要がある。
次の任務に進まなければならないのだ。
任務というと妙な感じだが、レイラとともに過ごし、観察監視しながらも、愛を持って正しく導く役割がある。
だが、実はまだ儀式の全容は知らないのだ。
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