第5話

○レイラのために


「フレッド!チェスをしよう」

2人で奥のテーブルに座り込む。


 アルバートは、家庭教師だが、只者ではない。貴族であり、すべての学業に秀でた騎士だ。


 フレッドと同時期に、この屋敷にきて、レイラと2人を教え、時には、男同士で、チェスで勝負をし、庭で剣を交え、アルバートもなかなかの使い手でだったので、白熱した練習になることもあった。

その頃は、レイラも加わり、4人で、遠乗り、ハイキングなど野外にも行き、トランプゲームに興じたり、屋敷に笑い声が響いていた。


 アルバートは幼なじみで家同士が決めた許婚という関係、しかし、レイラへの任務の責務を2人が受け、さらにお互い好意を確信し、勇気づけ合い、愛し合い、共に運命の相手だと感じていた。


 レイラとフレッドは、6歳と10歳で出会った。

主従関係ではあったが、この屋敷で過ごし、お互いを意識する年頃を経て、兄妹のような関係になったと思っていた。


 他の少女たちと変わることなく育つが、他の少女たちと同じような大人の女性にはなれない。


 ジュリアは、メイドが運んでくる食事とともに、決められたポーションを、毎日、レイラに飲ませていた。

それは、ヒーラーであるおばあさまがレイラのために用意したポーションだった。


 14歳を境に、レイラの体に変化が起こりはじめる。

体は成長が止まり少女のまま、心と体を何者かに支配されたかのように、思うように行動できない。

そんなレイラを見守ることも役目の1つだった。


 ある年齢に達した時、体が自動的に準備期間に入る、そして、彼女のDNAに刻まれた記憶がその段階ごとに、確実に実行されていくのだ。

まずは、蝶が青虫から蛹になる準備をするかのように。


 15歳になり、城から定期的に、メディカルポーションが届くようになり、抗えない義務として、それをを飲ませると、何に作用しているのか、何に効果があるのか、だるそうに昼中は夢うつつになり、そして、夜歩くようになった。


 フレッドはまだ何も知らない。

心配して、片時も離れることなくそばにいる。

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