第4話

 ○再会


 午前のティータイムに間に合う時間に、到着するだろう叔父たちを待っていた。

玄関先のアプローチサイドには、薔薇が咲き始め、草木や花の生命力を感じる季節の中にいた。


 程なくして、馬のひづめの軽快な音が響く。

叔父デーヴィト卿とアルバートの姿が見える。

「アルバート!」

駆け寄り、馬から降り立つ胸に飛び込む。

優しく抱きしめ

「ジュリア、お迎えありがとう。世話になるよ」

「はい、お待ちしていました」

恋人同士の会話など無視して、馬を繋ぐと、デーヴィト卿はさっさと屋敷に入る。

寄り添い手を繋ぎ、後について行く。


 ガーデンテラスに座り

デーヴィト卿が持参した紅茶を飲みながら

親族の近況話でしばし盛り上がる。


アルバートが

「フレッドもここに座って」

と影を呼ぶ。

フレッドを隣りに座らせて、耳打ちして笑ったりと会話が弾んでいた。

フレッドは影の名前だ。


レイラは機嫌良く、みなの会話を聞いていたが、続きの刺繍がしたいと部屋に入る。


その姿を目で追い

 「レイラに変わりはないかい」

デーヴィト卿に聞かれ

「いつものように過ごしています」

そう答えたものの、やはり一抹の不安がある。

「儀式のスケジュールは決定ですか?「

「それはもう決まっていることだから、近いうちに通知が届くはずだ」

と、前髪をかきあげる。

デーヴィト卿の困った時の癖だ。

ジュリアは次の言葉を待つ。


「実は、まだパートナーが決まってないんだよ」

「えっ、それはなぜですか?」

それは困る。

レイラには1日でも早くこの先に起こるであろうこと、儀式について知らせたい。

儀式に臨むまでが役目なのだから。


「遅れている理由は何ですか」

「すまないね。実はトラブルがあって中断しているんだ」

困惑した様子のデーヴィト卿。

「なかなか難しい状況なんだ」

アルバートが代わりに話してくれた。


 隣国がまた兵を動かし国境付近で、今は一触即発の状況らしい。

事と次第によってはまた戦争となる可能性がある。

この度の儀式については、意図は不明だが、なにかと理由をつけ、ストップをかける勢力があるらしく、スムーズに事が運ばないようだ。

結局、ギリギリまで、兵隊それぞれの力を見極めてから絞り込む方向となったらしい。

それもおかしな話だが、従うしかない。


 そういえば、前の戦争で戦況が悪化した際、控えていた少年兵隊を戦わせ、頭角を表したのがフレッドだった。

そして、わずか10歳にしてレイラの影になったのだ。

あれから、8年という月日を共に過ごしていたことを想うと複雑な気持ちになる。


 レイラはソファに座っている。

レイラに合わせてフレッドは動く。

この角度から姿は見えないが、奥の扉の横に立つフレッドが静かに見守っているはずだ。

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