第9話 はじめてのクエスト 中編 ~小鬼退治~

星導神セリカはお茶を1口、2口と飲み息をいれる。

さて、ナイルの機転で村の被害を最小に押さえることができました。

セリカは客人が少し笑っていたのに気づく。

如何しましたか?

ーいえ。かの剣聖ナイルが、食に興味津々だったと知り、ついー

客人の発言を聞き、セリカも微笑む。

ええ、特にこの頃は西に来たばかりであったことと、王女ナイルではない、1人の少女として振る舞えたことが大きかったそうですわ。

さて、ここから、彼女達と小鬼達の戦いがはじまります。

この小鬼退治もまた彼女達の運命の転機になる出来事の1つでした。

さて、どの様な運命の転機が待ち受けているのか、気になりますね?

では、続きをお話しましょう。

           1

小鬼の巣穴に向かい山道を進む一行。

天気は良好、陽射しも、少し冷たい風も心地好い。

「さて、歩きながらお勉強と作戦会議だ」

ちょいワル先生と3人の作戦会議が始まる。

「あー、先に言っておくが。俺を戦力に数えるな。あくまで、お前らの監督役だ。自分の身を守るくらいはするが、戦闘には一切参加しねえぞ、それを忘れるな」

先に説明されていたことを再度確認する3人。

「先生、小鬼の数は分かるのでしょうか?」

「おう。少なくとも50体と見積もった。これはかなり大がかりな群れだな」

ニーナのなるほど、と頷く。

「先生、あいつらの今回の住みかは洞窟を使ってるのよね?」

「ああ、そう聞いてるぜ。だったらどうした?」

ノアの質問に答える先生。

「ムッフフ。だったらカンタン」

妙に自信満々のノア。

「ほー、聞かせてもらおうじゃねぇか?」

ノアは両手を前にだし魔法を使っているかの様な構えをして

「水攻め!ダゴンメイルストロームで洞穴の中に大量の水を流し込んで、ざっぱーんと一網打尽よ!」

完全に、これ以上ない作戦だと思いドヤ顔のノア。

ダゴンメイルストロームとは、上位の黒魔法の1つ。魔界6魔王の1つ「海王ダゴン」の力を行使する魔法だ。超絶な激流と水量で敵を押し流す魔法だ。

それを聞いたちょいワル先生はノアに近づき…

「バカタレ!」と拳骨。

「痛った!なにすんのよ!この飲んだくれ!」

拳骨されたところをさすりながらくちごたえをするノア。

「ニーナ。何がダメか教えてやれ」

「え?わたくし?えーと…」

突然指名され驚くニーナ。思考を巡らせる。

「そ、そうですね。小鬼は先ず家畜を奪っています。既に全て食べられてるかもしれませんが、取り返せるものは取り返した方がよくありませんか?それから、小鬼に拐われた人がいるかもしれません。水攻めだと助けられるものも助けられなくなってしまいます。先生、如何でしょうか?」

それを聞いたノアは「あ」とだけ声をもらす。

「おう。満点だ」

ちょいワル先生はノアに向き直り、言う。

「ノアよぅ」

「何よ」

ちょっと不貞腐れ気味に答えるノア。

「黒魔法は威力も高く攻撃範囲も広い。が、下手を打つと仲間何かをを巻き込む。今、ニーナが言ったようなことは常に考えてくれぃ」

「…わかった」

拳骨には納得はいかないが、言ってることは納得できるのでしぶしぶ返事をするノアだった。

           2

警戒しながら進む。

小鬼の襲撃もなく、特に問題なく進む。そして、小鬼の籠る洞穴にたどり着く。

「中では小鬼が待ち伏せしてることは間違いねぇ。洞窟の中は暗い。小鬼は夜目が効くからな、十二分に気を付けろ」

コクリと頷く3人。

「ニーナ。暗い洞窟の中で弓は使えるのか?」

「はい。わたくしの場合おそらく問題ないかと…」

それを聞いて関心を持つ先生。

「ん?光源も少ない空間では、弓は不利かと思ったが、何かあるのか?」

「はい、実は…」

ニーナは例の『星』の話をする。動物や魔物の急所というか死点の様なモノが見えること。

「小鬼ははじめて見ますが、おそらく『星』が見えると思います」

なるほどな。と、ちょいワル先生。

「ナイルは刀が使えるんだったな。なら先頭はナイルだ」

「わかった」

ちょいワル先生はノアを見る。

「ノア。お前さん、護身の武器とかねぇのか?」

「え?ないよ。武術はからっきしだし。使えないもの持ってても邪魔だからね」

「小鬼に迫られたらどうするんだ?」

「決まってるじゃん。魔法で撃退するわよ。まー見てなさいって。先生、黒魔法にも基礎攻撃魔法があるの忘れてない?」

自信満々のノア。

ま、それなら良いが。と大まかな作戦を決め、一行は洞窟に進入していく。

「先生。魔法で光源は確保できるのだが、どうする?」

「そうだな。松明とか使わなくて良いのは便利だな。やってくれ」

「わかった。…光の精霊よ…」

ナイルは魔力を込め右手を握り混む。すると淡い光がナイルの右手を覆い、それを確認すると手を開く。

すると、ぽうっ、と拳大くらいの大きさの光の玉が淡い灯りを放ちながら浮遊していく。

「これくらいでどうだろうか?」

「問題ないと思うぜ」

「わかった」

ノアは灯りの玉をみて関心する。

「昨日のゴーレムといい、結構便利なのね、精霊魔法って」

「ああ。私の魔法の師が敵を討つ魔法よりもこういった便利な小回りの効く様な魔法が好きだったんだ。その影響だな」

「へー、いいなぁ。楽しそう。あたしも精霊魔法使ってみたいな~」

「ノア。それは無理でしょう?貴女は既に黒魔法を使ってるのだから」

「まあ、そうなんだけどね」

「おい、無駄話してんじゃねぇ。敵地だぞ」

ノアのお喋りを注意するちょいワル先生。

「ぶー。また、あたしにだけ注意してぇ」

拳骨といい、今の注意といい、ノアは少し不満気だ。

洞窟に一足踏み入れたところで、ナイルは何か思い付いた様な表情をする。

「そうだ。土の精霊に働きかけ、この洞窟の構造を探ってみよう」

「そんなことも出来るのですね?確かに便利です。でも、そんなことして貴女の魔力は持つのですか?」

「ああ。私は戦いでは殆ど魔法は使わないつもりだ。だったら、こういうことで魔法を使った方がいいと思う」

「なるほど。でしたら、お願いした方が良さそうですね」

「分かった、少し待っててくれ」

とナイルは洞窟の地面に手を触れ「土の精霊よ…」と魔力を巡らす。

……

「よし、だいたいの構造が分かった」

と、適当な木の枝を拾ってきて地面に地図を書くナイル。

洞窟内の構造は、途中で二手に分かれており、片方はさらに3部屋ほどある。もう片方は大きな広場の様になっている。

「こっちの広い方は全員で集まったりしそうなスペースね」

「こちらの3部屋はなんでしょうか…」

ニーナとノアは洞窟の構造を読み解こうとする。

「小鬼は、寝るところと排泄するところ、なにやら溜め込む場所と近くに作る習性があるそうだぜ。それを踏まえて、お前さん達で作戦を立てて行動しな。ここからは俺はヒントを出したりしねえぞ」

と、ちょいワル先生が小鬼の習性を教える。

「あたしは一気に大部屋かな?ボスクラスもいそうだし、他のもたくさん居そうだからね」

「でも、そうなりますと…挟み撃ちに合いませんか?」

「ん?むしろあたしはそれが狙いよ。だって、向こうから来てくれるんだから、面倒がなくていいじゃん」

「ふむ。大部屋を襲撃しながら援軍に来る可能性のある奴等を迎え撃つという感じか?」

「そうそう。ほら、ここ」

とノアをが地図を指差す。

「大部屋の入口、少し細長い通路になってるでしょ?」

ニーナとナイルはノアの指指したところを見る。

「確かに、通路としては狭そうですね。でも、上手くいくのかしら?」

ニーナはどこか心配であった。何もかもはじめての経験なので不安もある。

「大丈夫よ。あたしを信じて!」

と、微笑むノア。その笑顔には何故か不安を払拭させるよう何があった。

「ふふ。そんなに自信満々でいられると、信じずにはいられないな」

「うふふ。確かに」

そして、3人は「うん」と頷きあい、小鬼の巣窟たる洞窟に足を踏み入れていく。

           3

さて、ここで小鬼について改めて説明をしよう。

小鬼、ゴブリンとも呼ぶ堕神の眷属である。

小鬼の様な人に似た姿の眷属の事を「亜人」と称している。人間と遭遇している亜人の中ではダントツに数が多い。

小鬼の体長は1mほどで痩せこけた個体が多い。体毛はなく緑色の肌をしている。身体が小さいので使える武器も身体のサイズにあったものとなる。鉈やナイフ、簡素な棍棒などが主な武装だ。弓を扱える個体も存在する。

亜人の基本行動概念である「喰う、寝る、奪う、殺す、犯す」を元に行動する。知能は低いが、狡猾で卑怯であり、動物や魔物を調教することもある。群れを形成する習性があり、小鬼を統率する能力を持った(身につけた)個体や呪いを行える個体など基本的な個体から知的な成長をしたものが群れを率いる。洞窟や廃墟を根城とすることが多く、基本的に夜行性で夜目も効く。「たかが小鬼」と舐めてかかった新米の冒険者や傭兵達が小鬼の群れに痛い目に合わされるとも少なくない。

返り討ちにあわされた人間の末路は悲惨だ。男は徹底的に痛ぶって殺され、女は繁殖の為、凌辱の限りを受ける。小鬼の巣からそういった被害を受けた女性が救出されることもあるが、多くの女性が心を壊してしまう。救出されても、小鬼から受けた屈辱に堪えきれず自ら命を断ってしまう者もいる。

希に、その屈辱をバネに小鬼や堕神への怒りや復讐心で自らを奮い起たせ、戦いに身を置く者もいる。

今回の小鬼の群れは推測で50匹程度。比較的大きな群れだ。実際に家畜を奪われたという被害は少なくない。

だが、小鬼の群れを生かしておく必要性は何もない。

亜人は発見次第、殲滅が原則だ。生かしておいて良いことは何もない。

その事を踏まえ、3人は慎重に洞窟を進んでいる。

ナイルの魔法により、洞窟の行動を粗方把握しているとはいえ、何処から小鬼が現れるかは油断できない。

一行の先頭はナイル。精霊魔法の灯りを元に進む。やや後ろ目の中衛にはニーナ(と、ちょいワル先生)。前にも後ろにも弓による援護、神聖魔法による支援を行い易いポジションだ。殿はノア。背後からの小鬼の奇襲に備える。

別れ道の交差点に差し掛かる。

「待て。何か気配がする」

ナイルが制止する。耳をすますと、前方から何やら声の様なモノが聞こえる。

小鬼の声だ。距離は少しあるだろうか。

「弓は届きそうですか?」

ニーナがナイルの隣まで行き、様子を伺う。

小鬼がある程度近づいて来たところで、ニーナには例の『星』が見えた。

「ナイル、ノア。先程話した『星』が見えました。数は5。此方に5匹向かってきています。今ならわたくしの弓で仕留められます」

「オーケー。やりましょう。一応、あたしも魔法を準備しとく。間に合わない場合は言ってよね」

「なら、私はいつでも斬り込める様にする」

3人はコクリと頷く。

「行きます!」

弓を引き絞った状態でニーナは躍り出る。

そして、直ぐ様、矢を放つ。

放たれた矢は寸分の狂いなく1匹の小鬼の星を射抜き、死に至らしめる。

予想もしてなかった攻撃に小鬼達があわてふためく。

その間にすかさず2射目を放つニーナ。

第2射目も例の星を射抜く。

2匹目がやられたところでようやく小鬼達は襲撃されていることを察する。そして、その内の一匹が仲間を呼びに奥に行こうとする。

「ノア。その位置から真っ直ぐ魔法を放ってください。奥に逃げ様としている輩がいます。わたくしの弓では届きません」

そう言い、第3射。ギャッ、という小鬼の断末魔の叫びが聞こえる。

「オーケー!行くよ!エネルギーボルト!」

ノアは指先から圧縮された魔力の矢を放つ。黒魔法における基礎攻撃魔法だ。その威力は小さめの岩なら貫通できてしまう程だ。

魔力の矢が小鬼を捉える音と、叫びが聞こえる。ノアも仕留めた様だ。

その間に、第4射を放ち、最後の小鬼を仕留めるニーナ。

「すごいな、2人とも。私の出番はなかったな」

ナイルは2人の連携プレーに感嘆する。

灯りで小鬼の居たと思われる辺りを照らしてみると、5匹の小鬼の死体が確認できた。

「1匹づつ矢が刺さってる位置がちがうんだな」

「はい。星が見える位置はそれぞれ違うのです」

そう言い、ニーナは小鬼に刺さっている矢を抜く。

「矢を抜いてどうするの?」

「使えるものは再利用します。矢も有限ですから」

ニーナが持ってきた矢は20本。小鬼から4本の矢を抜いては状態を確認するニーナ。そして、使える矢を矢筒に戻す。

尚、ノアの放った魔法の矢は小鬼の頭を撃ち抜いていた。

「うへぇ。あたしならカンベンだなぁ。ニーナっておっとりおしとやかに見えるけど、結構ドライなところもあるのね」

「ドライかどうかは分かりかねますが、やはり、狩りをしていた。影響でしょうか?」

と頬に指を当て小首を傾げるニーナ。

なるほどね~。と、ノア。

「どちらに進む?」

とナイル。

「当然、小鬼が来た方!」

迷わず決めるノア。

ナイルもニーナも同意し、慎重に進む。

しばらく道なりに進んでいく3人。

「…見えました。また5匹です。走り始めました。ナイルも迎撃の用意を。ノアはそこから攻撃して下さい」

ニーナの『星』が見える能力がことのほか役にたっている。

ニーナは2人に指示を出すと、直ぐに弓に矢をつがえて放つ。

ノアもそれにあわせて魔法を連続で放つ。

弓と魔法の違いである。

弓は構え、矢をつがえ、弦を引き、矢を放つ。という動作が必要だが、魔法、それこそ大きな魔力を使わない基礎攻撃魔法なら魔力を集中して放つ。この2動作である。攻撃の回数は魔法の方が上だろう。

ニーナの矢は勿論、ノアの魔法も小鬼を仕留める。

ノアは魔法の矢が放つわずかな灯りから小鬼の位置を大まかに把握した上で魔法の矢を放つ。

魔法を扱うセンスというものについて、ノアはずば抜けた才能を持っていた。溢れんばかりの才能を持ちながら自分の夢に向け努力を怠らない。こと、魔法に関してはそれが出来ているのだが、自分の興味のないことはとことん手につかないのもノアである。

魔法の矢が迫ろうとしていた小鬼全てを撃ち抜く。

「どーよ。今回はあたしが3匹。ニーナが2匹」

「ああ、2人とも大したものだ」

「別に競うものでもありませんよ、ノア」

今度は使った矢を回収しないニーナ。それをノアが指摘すると。今回使った矢は、先程使ったもので3回は使えないから、とニーナは答える。

「うーん。やっぱり、ちょっとドライよね」

と、肩をすくめるノアだった。

……

行程は順調だと思われる。2度の遭遇戦以降は小鬼と出くわさない、おそらく警戒しているのだろう。ナイルの見立てた地図を思い出しながら3人は進む。

「よし、この先が例の大部屋だったな。大部屋には私が一気に斬り込む。2人は援護を」

ナイルの言葉に頷く2人。

「ニーナ」

「はい」

「先生が話した呪いを使うものの攻撃には特に援護が欲しい。精霊魔法で弓矢や小さい投擲物は防げるが、魔法の類いは無理だ」

「分かりました」

そういい、ナイルは魔法を使う。

「風の精霊よ、その風で我を護りたまえ」

自信に魔法をかけるナイル。ノアにはナイルが風を纏ったのが分かった。

「この風はなあに?」

「ああ。ミサイルガードという魔法だ。風の力で弓矢や礫などの投擲攻撃を反らすことができる」

「ふーん。やっぱり便利ね。精霊魔法」

「ふふ。戻ったら教書でも見てみるか?使える使えないは別として」

「いいの?勿論!じゃあ、さっさと片付けて!村で美味しいもの食べて、学校に帰りましょ!」

ノアの言葉に2人が同意する。

「おい、お前ら、無茶だけはするなよ」

「先生、ご心配なく。わたくし達、かなりやれると思いますよ?」

心配するちょいワル先生に微笑みかけるニーナ。

「よし、行こう!」

ナイルの一言を合図に作戦が開始される。

          4

洞窟の奥。

ナイルの地図で言うところの大部屋の先になる。

そこでは数名の装備の良い小鬼がさながら門番の様に2匹立っている。

「い、イヤだー!こないでけろー!」

と、若い女性、おそらく少女であろう。部屋の中から声が響く。両手は頭の上で縄で雑に縛られている。

服は破かれ、裸の状態だ。部屋の中には恐らくリーダー各と思われる小鬼が、下卑た笑みを漏らしている。

その小鬼が少女の脚に触れる。

「ひっ!触らないでけろー!お嫁に行けなくなるだー!」と暴れる少女。

と、そこに1匹の小鬼が慌てて入ってくる。

何やら報告のようなものをしている。どうやらナイルでも見つけられなかった隠し通路の様な所に潜んでいた様だ。

ゴブリン語を訳すとおおよそこんな会話だ。

ー大変!人間攻めてきた!ー

ーなに?数は?ー

ーめ、雌3匹!雄1匹。この雌3匹、強いー

それを聞いたリーダー各の小鬼は。少女を連行させるような素振りを見せた。人質にでも使うつもりだろう。

「いやだ!触らないでけろー!お母ちゃーん!」

暴れる少女を無理矢理連行する小鬼達。

ーバカな人間の雌ども。後ろから挟み撃ちにしろ!お前も挟み撃ち組と一緒に戦えー

と伝令役の小鬼に伝えるリーダー各。

ーキッヒヒ、雌ども、たっぷり可愛がってやるぞー

リーダー各の小鬼は下卑た笑みを浮かべた後、ゆっくりと動き出す。

……

ナイルは灯りを部屋に飛ばす。一呼吸置き。

「行くぞ!」

呼吸を整え一気に小鬼達との間合いをつめる。

いきなり飛んできた灯りに気を取られる小鬼達。

気を取られたと思ったら、目の前にナイルが迫って来ていた。

そのままの勢いで小鬼に突きを放つナイル。

ナイルの秘剣、四風剣が1つ、超高速突撃刺突技「疾風」である。

そのまま、一瞬待ち、一斉に小鬼が向かってきたところで、再度呼吸を整え、大きく円を描く様になぎ払う。

その斬撃は迫る小鬼を全て両断する。

四風剣が1つ、広範囲斬撃「旋風」である。

このわずかな時間でナイルは5匹の小鬼を仕留める。

「す、すげぇ。一体どんな身体能力してんだよ、あの嬢ちゃん…」

さすがのちょいワル先生もナイルの動きに舌を巻く。

ナイルの強さに怖じ気付いたのか、小鬼がナイルに仕掛け様としない。

しかし、その隙を逃すニーナではなく、直ぐ様に矢を放ち、1匹、2匹と確実に小鬼を仕留めていく。

「私の言葉が分かるかは知らないが、こないなら此方から行くぞ!」

統率の乱れる小鬼にナイルは斬り込む。

秘剣を使わなくても小鬼程度はナイルの敵ではない。

小鬼達はギャアギャアと声をあげる。

ーこ、この人間の雌ども、つ、強いー

ーせ、先生!先生!お願いします!ー

すると奥から一際体格の良い小鬼が現れた。

普通の小鬼の倍くらいの大きさの個体で、それに伴い筋肉も発達しており、大きな棍棒を持っている。

「先生、あの大きい小鬼は何ですか?」

ニーナは弓に矢をつがえながら質問する。

「あれはホブだな。知能はたいして他の小鬼どもと変わらねぇが、身体だけは見ての通り成長しやがった個体だ。群れの用心棒的な存在だな」

なるほど、と呟き、そのまま周囲の小鬼に矢を放つニーナ。

「ほう。大きな小鬼。私に挑むか?面白い!」

ナイルはホブが自分をターゲットにしたのに気付き、構える。

ホブは勢いよくナイルに突進し、無造作に棍棒を構え、叩きつけてくる。

「甘いな…」

呼吸を整え、相手の攻撃を最小限の動きで避けるナイル。そして、その攻撃の隙に斬撃を繰り出す。

ナイルはホブその勢いのまま払い抜ける。

「これが、秘剣・凪」

ホブは何が起こったのか認識した時にはすでに上半身と下半身がお別れを告げていた。

「すっご。ナイル、無双じゃん」

後方で備えていたノアも感嘆の声をもらす。

その時、通路の方から小鬼が勢いよく突撃してくる足音が聞こえた。数は10匹くらいか?

「ノア!後ろから来てます!」

「分かってるって!任せてよ!」

と、ニーナにウインクを返すノア。

「いいコいいコ。ホントおバカさんね!挟み撃ちのつもり?」

ノアは直ぐ様魔法の詠唱に入る。

『其は、魔界における6柱が王の1つ。嗜虐たる毒蛇の王アスタロト。汝が毒と雷を持て、我が敵を嗜虐せよ』

魔法を完成させたノアは向かってくる小鬼達に魔法を放つ。

『蛇王雷毒衝(ヴァイパー・サンダー)!!』

ノアは手から雷撃を放つ。

その雷撃は狭い通路に縦帯していた小鬼達を貫く。

あたり具合は小鬼によって違う様だ。

「ノア。大丈夫なのですか?」

「全然、問題ないわ。ね、先生」

心配するニーナをよそにノアには絶対的な自信がある。

「ああ、ノアの言う通り。あの雷撃にかすりでもしたら最後。そこから毒が回るように雷撃が相手を痛め付け苦しめるのさ。いやらしい魔法だよ。ホント蛇の王に相応しい魔法だ」

「そゆこと」

その説明の直後に今の魔法を食らった小鬼達が苦しみ出す。全身にゆっくりと毒が回るように雷撃が小鬼達の身体を蝕んでいく。

後方から挟撃しようとして来た小鬼の一団はノアの魔法により一網打尽にされた。

「ちなみにヴェノム・サンダーは直線的な魔法だけど蛇の様にのたうつし、命中したら近くの対象に伝播していくイヤらし~い魔法よ。だから、効果範囲内なら隠れてもムダなわけ」

と、岩陰に隠れていた小鬼にも毒の雷は伝播し、のたうち回り絶命する。

入口からここまでで合計10匹。挟撃しようとしてきた小鬼が15匹。ホブも含め、広間にいたのが20匹ほど。

なお、広間の小鬼はナイルとニーナによりほぼ殲滅された。

ニーナは奥の方から「何か」がナイルに向け放たれたのに気づいた。

「危ない!ナイル!『魔法障壁(マジックプロテクション)』」

ニーナの放った魔法障壁がナイルに向け放たれた何かを防ぐ。

「ちっ、呪い師がいやがるか。気を付けろ。そこら辺の小鬼とは知性が違うぞ」

先生の助言を聞き、構える一行。ニーナは再度弓を構えようとする。

「キッヒヒ、降伏シロ、人間ノ雌ドモ」

小鬼呪い師が一行に降伏勧告をしてくる。

「た、助けてけろー!」

小鬼呪い師が人質を連れ現れる。引き連れて来た小鬼の数は10匹ほど。

「人間の言葉喋ったことにも驚きだけど、まさか人質作戦に出てくるなんて」

ノアが悪態をつく。

「どうする?」

3人はひとまず集まり、手短に相談する。

「何はともあれ、人質の解放、救出だと思うが」

「ええ。一度、武装解除をしたフリをして油断させた上でわたくしの魔法で目眩まししましょう。本来の用途と違うものですが、以前にやったことがありますから」

ニーナはかつて魔物の目を眩ませた方法を小鬼相手に応用しようとしている。

「人質がいなければ、あのくらいの数、一気にやっつけられるんだけど…」

「では、目眩ましの間にわたくしが人質を押さえている小鬼を仕留めますから、その間にナイル、何とか人質の方を救出して間合いを取って下さい」

「なるほど。確かに…それが一番良さそうだな。その案で行こう」

ニーナ達がこそこそ話していると。

「何ヲ話シテ居ル!」

そう言い、小鬼呪い師は黒い何かを、3人に当てないように飛ばす。

「サア、オマエラモ武器ヲステテ脱ゲ!サモナイト、コノ雌ヲ…」

と呪い師は人質の少女の喉元を指で撫でる。

「ひっ!た、助け、て」

3人は頷き、作戦を開始する。

「分かった、武器を捨てよう」

と、ナイルは刀を放り投げ、ニーナも弓を捨てる。武器を持たないノアはとりあえず、両手を手をあげる。

ノアはこの時、小鬼に分からないように魔法の詠唱をはじめていた。

「キッヒヒ!ドレ、1匹ヅツ、剥イテヤルゾ!」

と下卑た笑いを浮かべながら、小鬼呪い師が人質から2、3歩離れたところでニーナは行動に出る。

『ホーリーライト!!』

目映い聖なる光が広がり、一時的に小鬼の視界を奪う。

『ホーリーアロー!』

ニーナはその間に人質をとらえている2匹の小鬼に魔法の矢を放つ。

魔法の矢は小鬼の『星』を射抜く。

2回目のホーリーアローが放たれたのと同時に、ナイルは一気に人質の少女に近づく。

「大丈夫か?もう安心だ」

そう言い、少女の腰を抱え、また、一気に小鬼達から離れる。

「よし!やれ!ノア!」

ナイルの合図を気にノアは魔法を解き放つ。

『冥王吸命陣(ヘルスティール)ッ!!」

ノアは魔界6魔王が1、冥王ヘルの魔法を放つ。魔法を放つと小鬼の足元に魔法陣が出現し、光を放つ。その光に触れたら小鬼達は一気に生命力を吸収され、果てて行く。

「ナ、二…」

自分の身に何が起こったのか分からないまま小鬼呪い師は冥王に命を吸われたのだ。

「す、すごい…」

人質だった少女は何が起こったか分かっていなかった。1つ、確実に分かるのは、自分は助かった、ということだった。

           5

「大丈夫か?」

ナイルは助けた少女に声をかける。

「はい。ありがとございますた。お嫁に行けなくなるところですた」

少女はペコペコと頭を下げる。

「ういー、終わったかぁ。いやー、大したもんだー。拐われてた娘も助けちまうなんてなー」

3人の戦いを黙って見守っていた先生がナイルに近づこうとする。

「待て、先生はそれ以上近づくな!近付いたら斬る!」

物凄い剣幕で、ナイルがちょいワル先生の近づくのを静止する。

「どしたの?」

と、ノアとニーナが近づく。

「「あっ」」

少女の姿を見て、ナイルの意図を察する2人。

「うおーい、どうしたんでぇ?」

近づこうとする先生をニーナとノアも止める。

「先生、ナイルの言う通り、それ以上近づかれたら射抜きますわ」

とニッコリ笑いながらニーナ。

「そうそう。先生、何の魔法くらいたい?出来れば後ろ、向いててね」

ノアもニッコリ笑いながら。

さすがのちょいワル先生も少女3人に凄まれたらその通りにしなくてはならなかった。

「さて、どうする?」

近づいてはじめて分かったこと。そう、少女が裸であったことだ。

「とうもこうも、こうするしかないでしょ」

と、ノアは自分の上着を脱ぎ、少女に着せてやる。

「あ、ありがとうだす」

「うん、いいのいいの。ニーナ。はしたないとかいわないでよ?」

「言いません」

内心、ニーナは感心していた。

何も着てない少女に何の躊躇いもなく自分の上着を着せてやったノアの行動に。

「先生、もういいよ」

「おう」

と、先生が近づいて来る。

近づいて来たところで、先生は何で3人があの剣幕だったか察した。

「そういうことか、いや、すまねぇな。配慮がたりなかったぜ。ノア、寒いだろう。この嬢ちゃんには俺の上着をだなぁ…」

と先生がローブを脱ごうとしたところで。

「却下だ」

「いけません」

「ダメに決まってるでしょ」

と3人がこぞって否定する。

「ど、どうしたんでぇ…」

ナイルとニーナは少し顔を反らし、ノアは「はぁー」と深くため息をついてから。

「そんなの…先生のくっさい服なんか女の子にきさせられないでしょ!」

思いもよらないノアの答えに面をくらうちょいワル先生。

「く、臭い?俺が?」

と、身体の臭いを嗅ぐ素振りをする。

「先に言っとくけど、オッサンにはわからない臭いだからね!女の子はその辺敏感なの!」

「いや、でもお前らそんな素振りはちっとも…」

「そんなの、ニーナとナイルには事前に話しておいたの!あたしはなれてて耐性あるけど、はじめての人は、ムリ!!!」

と、腕をバッテンの形を作るノア。

「ちなみに、2人が何も言わなかったのは、一応先生だから、気を使っただけだからね!」

「ぐぬぬ…で、でも何でお前さんの服なんだよ!」

ギロリと睨み付ける3人。

「そんなの、ナイルのはナイルの体型に合わせてあるし、ニーナの服だと胸が入らないから、結果的にゆったり目なあたしの上着になるに決まってるでしょ!」

……

「ノア」

ニッコリ微笑みながらノアの肩に手を置くニーナ。

「なに?」

「誰の服だと、どこが入らないのですか?」

「いや、だから。ニーナのだとあの娘の胸がきついだろうから。あの娘、ポッチャリ系で大きいでしょ?」

「だから、何の話です?」

と、ギリギリと手に力を入れるニーナ。

「痛い!痛い!おっぱいの話だから。ほらニーナ小さいじゃん?」

「……」

更に手に力を入れるニーナ。

「いや、痛いから!てか、普通にちょいワル先生の前で脱ぎたくないでしょ!おっぱいの大きさは関係なく!あたしはなれてるからいいけど!」

そこで手を話すニーナ。ノアの肩にはくっきりとニーナの手の跡がついていた。

「そういう配慮してくださってるなら、余計な事は言わないでそう言ってください」

一呼吸おいて。

「それから、お胸のことですが、おっぱいとか言っちゃいけません。はしたない。わたくし、大きさ何てぜんっっっっぜん気にしておりませんから」

(めっちゃ、気にしてるじゃん。つーか、どんな握力なのよ)

「何か言いました?」

「い~え、何にも」

昨日同様の口喧嘩が繰り広げられる。

「ナイルよぅ」

「何です?」

「あいつら、あんな感じなのか?」

「ええ、昨日も朝早くから仲良く喧嘩してましたよ」

全く、と言わんばかりに肩をすくめるナイル。

「おーう、お前らここら辺にしとけ」

ちょいワル先生に止められ、ハッとする2人。

「うふふ。お二人ども仲良しだす」

助けた少女にもクスクスと笑われてしまったのだった。

……

とりあえず、一番奥まで様子を見ておこう、と言うことになった。助けた少女、名はファムムという。ファムムも連れて行くことにした。

「わだすのわがる所でんわ、もう小鬼さはいねぇどおもいますが」

と、捕まっていながら把握していた事をファムムは話してくれた。

全ての小鬼は討伐したので静かなものである。

「こごだす。わだすはこごに捕まってますた。このお部屋には何もありません。こごで、酷いことされそうになりますた。あなだだちが来てくれて、ほんどに感謝しでます」

ファムムはペコペコと頭を下げる。

念のため、ファムムが捕まっていた部屋を見てみる。

慎重に中を確認する一行だが、ファムムの言う通り、これといったものは何もない。

「この部屋は拐ってきた女性を閉じ込めておく部屋の様ですね」

「ああ、だが、ここで女性が被害にあったりしていたと思うと、寒気がする」

ファムムは、まさに犯される寸前で助けられた、と説明した。

「ファムム。他に女性はいなかったのか?」

「はい~。わだすが拐われてきた時は、わだすだけですた」

そうか。と短く答えるナイル。

次の部屋に入ろうと入口まで来たところで、ナイルは身構える。

「中から気配がする」

「おかしいな。小鬼は50匹くらいって感じだったが」

「先生、確認するか?」

「俺に聞くな。お前らが決めろ。まだ、クエストの途中だ」

確かに、とナイルは頷く。

「どうする?」

「見ましょう。何が潜んでいるか分かりませんから」

「そうね」

3人は頷いて、ナイルを先頭に部屋に入る。

「こ、これは…」

部屋に入ると、小鬼の子どもが怯える様に隅の方に固まっていた。数は10匹ほどだろうか。

「子どもの、小鬼?」

「先生、どうしたらよろしいか助言をお願いします。さすがに、子供の小鬼を撃つのは…」

と、ニーナとナイルは躊躇う様な素振りをみせる。

「助言も何もねぇ。対亜人の大原則を元に行動しろ。子どもだからといって例外はない」

分かっていた答えを聞き、心苦しくなるニーナとナイル。

「2人とも優しいから躊躇っちゃうよね。いいよ、あたしがやる」

と、言い、指先に魔力を集中しだすノア。そして、ニーナとナイルの回答を待たずに子どもの小鬼を撃ち抜いていく。

「酷いって、思うかもしれないけど、聞いたことあるんだ、あたし。人間への怨み辛みを持って、それが大きければ大きいほど、小鬼は成長、進化するって。そうやって小鬼英雄なんかの上位小鬼が生まれるんだって。だから子どもの小鬼は皆殺しにしないといけないの」

ノアの説明が頭では分かっても、どこか引っ掛かるものがある2人だった。

「それから、子どもの小鬼がこれだけ居たってことは。それだけ女の子が被害にあって、酷いことされて、小鬼産まされて、痛め付けられて殺されてるんだよ。そっち考えると、あたし、赦せない…」

ノアの言うことに確かに、と思うニーナとナイル。現に、ここにいるファムムも3人が来るのが遅ければ、同じ様な仕打ちを受けていたのだ。

「わだす、お嫁に行けないカラダにされるどごろか、小鬼さ産まさせられそうになってたんだすな。おそろしいだす。ホント、ありがとうだす」

ファムムの心からの謝意が3人には嬉しく感じた。

……

とりあえず、部屋と言う部屋は全てチェックした。

途中、小鬼の排泄部屋に入りそうになり、気分を害したことは言うまでもない。

子どもの小鬼を見てからは小鬼の姿はなかった。

「もう、終わりだな。ご苦労さん。お前らホントすげぇな」

と、ちょいワル先生が3人を誉めようとした矢先に… 「ちょっと待ってくれ。この壁面、少しおかしいな」

と、ナイルが洞窟の壁面のある部分に違和感を感じる。

精霊の力の働きを感じれるナイルだからこそ気づいたのかもしれない。

「よし、ノームよ」

と、土の精霊をよび「トンネル」と言う壁に穴を開ける精霊魔法を使う。

すると、壁はボロボロと、崩れるそして、その先に大理石どの様な明らかに洞窟の土砂とは違う物質で出来た空間が広がっていた。

「先生、これは?」

「ん?って、これはたまげた。遺跡じゃねぇか!ちょっと入ってみよう」

遺跡と聞き、少し入ってみることにする。

壁はほんのり灯りを放っており、灯りの魔法は必要ないくらいの光源は確保されている。

「すげぇな。小鬼の巣穴の奥にこんな見事な遺跡があったなんてよぅ」

「確かに、なんが、すごいだす。」

ファムムも何かを感じた様だ。

「先生!あたし探検したい!」

「僭越ながら、わたくしも」

それを聞いたちょいワル先生は少し考え込む。

「先生、クエストの途中でこの様な遺跡を発見した場合はどうするんだ?」

ナイルの質問に答える先生。

「ギルド…って、この場合は学校になるだろうが、報告の義務はある。未踏の遺跡は基本的には『早い者勝ち』だ。この遺跡も、そうなる」

先生は3人にギルドの基本的ルールについて大雑把に説明する。

「なるほど、これは行くしかないね!」

「ええ!」

そこで3人を止めるちょいワル先生。

「おい、行くのは構わねぇが、ファムムはどうするんだ?」

「いえ、1人では村さ帰れないがら、皆さんについでいぎます。邪魔にはならない様さするがら」

それについて、3人とファムムは同意する。

「分かった。じゃあ、ファムムも同行だ」

ぱぁーっと明るい表情をするファムム。

「その前にもう1つ。遺跡の入口で少し休憩しろ。思ったより、消耗しているはずだ、少し休め」

ちょいワル先生の言うことに納得した3人は、ファムムと話ながら、ニーナの持っていたおやつのドライフルーツを食べたりしてリフレッシュをした。

小鬼を退治した後にこの様な遺跡が見つかるとは誰も思っていなかった。

そして、この遺跡で更なる大きな運命が待ち構えているのだ。


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