第6話 ルーンヴェスタ魔法学校

さて、三聖人のルーツについてお話ししました。

先も話しましたが、魔法学校で遂に3人が出会います。

三人は魔法学校での思い出を何年経っても楽しそうに話していました。

では、話を続けましょう。

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季節は巡り、春。

ここは西側諸国の三大国家の1つ、魔法公国ルーンヴェスタ。

この国に魔法が伝わったとされ、優秀な魔法使いを算出してきたことから、『魔法公国』の通称がつけられた。

そして、この春より、より多くの人が魔法を学べるように、と魔法学校が開かれるのだ。

暖かな陽射しと咲き誇る花が魔法学校の開校を彩る。

街は普段以上に賑わいを見せている。そう、今日がその魔法学校の開校日なのだ。

魔法学校の生徒と思われる若者達がひっきりなしに設立された学校の門を潜っていく。

魔法学校は全寮制となっており、大きく男女で棟が分かたれている。

「入学生の方の大きな荷物は寮入り口で預かります。式典の間に部屋に運んでおきますので!」

と、係員が大きな声を出し、広報する。

その広報に従い、水色のブラウスにブルーのスカートの白いカチューシャの少女が受け付けに向かう。ニーナである。

「えっーと、お名前は?」

「ニーナと申します。ニーナ・カンダーナです。神聖魔法科への入学です」

受付のオバチャンはなれた手順で名簿を確認していく。

「おっ、あったあった。お嬢ちゃんの部屋はここね」 と、部屋番の札の着いた鍵を渡してくる。

「貴重品だけ持ってね。後は部屋に入れておくよ。そのまま式典会場に行っておくれ」

分かりました。とオバチャンに荷物を預け、式典会場に向かうニーナ。

一方その頃街の広場ではキャラバン隊が賑やかにある少女を見送っていた。

「お嬢!忘れ物はねぇですかい?」

「お嬢!また珈琲持ってきますよ!」

「お嬢!頑張って下せえ!」

「お嬢!重くねえですかい?手伝いましょうか?」

「お嬢!カレシくらい作りなさいよ!」

と、男女問わず、赤い上着に赤いつば広の羽根つき帽子の赤茶毛の少女に代わる代わる声をかけている。尚、帽子はキャラバンの面々から餞別で貰ったもの。

キャラバンの娘、ノアである。

「もう!大丈夫だから!見といてよ~!ぜっっっったい、史上1番の魔法使いになってやるんだからッ!」

そう言い、大きな荷物を持ちながら手を振り、「行ってきます!」と学校に駆けていくノア。

程なくして女子寮に着く。ノアは受付のオバチャンに。

「黒魔法科のノアよ!ノア・セリーナ!」

元気よく声をかける。

「ノアちゃんね。うんうん、あったよ。じゃあ、これね。大きな荷物は預かるからね」

とニーナの時と同じ説明をするオバチャン。

「はーい!これからヨロシクね、オバチャン!」

と軽くウインクをして式典会場に向かうノア。

嵐の様にノアが去った後に大荷物を持った黒髪の少女。緑の民族衣裳が清々しい。東国出身の彼女は人々の目を引く

「精霊魔法科のナイルだ。ナイル・フォン・アークザイン」

ナイルもまたオバチャンに声をかける。

「ナイルさんね?あー、あったあった。へー、お姫様なの?オバチャン達が荷物運んでも大丈夫かい?」

「ああ、そこは問題ありません。宜しくお願いします。寧ろ、荷物が多くて申し訳ない」

「いいのよ、貴族様の中ではナイルちゃんが一番荷物少ないわ」

と気さくに笑いながらオバチャンはナイルの対応を他の少女達と同じようにする。ナイルにはそれが少し嬉しかった。

ひっきりなしに学校に入学生達が訪れ、受付のオバチャン達はてんやわんやだ。

何しろ総勢250人から300人の規模で人が集まっているのだ。それだけ、アレン公子の思い入れが強い、と言うことであろう。

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入学の式典は形式ばった挨拶や祝辞を述べたりする、大した内容のものではなかった。

それでも代表者のアレン公子の話はこの学校にかける想いが強く、強く込められており、聞くものを圧倒した。

生真面目なニーナは式典中も背筋を伸ばしキチンと座り、話を聞いていた。

一方のノアは話がつまらないとなると、足を組んでうつらうつら…

ナイルは王族なので、貴賓席に。アークザイン王国の出身であり、国からの代表者である。西側では珍しい黒髪は目を引くし、アオズズアイなどの正装の美しさは西側諸国の人々からはエキゾチックで興味をそそるものだ。

長い長い式典が終わりを告げようとする。

「…では、夜は交流を兼ねました立食パーティーとなります。生徒の皆々様は1度、寮のお部屋に戻りリラックスしてて下さいませ」

こうして入学式典は解散となった。

……

学校の生徒達は思い思い、割り当てられた部屋へと向かう。

この寮は3人で1部屋を使う規則だ。

先に渡された部屋の鍵に印された番号を見ながら、ニーナは部屋へと向かう。

「ここかしら?」

鍵の番号と一致する部屋に着いた。

どんな方と同じ部屋になるのでしょうか?仲良くできるかしら?ニーナは内心、ドキドキしていた。

「先に入って、お待ちしていましょうか?」

ニーナが呟き、ドアノブに手を伸ばしたところ、別の 手もそのドアノブに手をかけ、手が触れる。

「「あら?」」

2人はお互いの手を見てから、相手を見る。

「もしかして、この部屋の人?」

赤い帽子を抱えた赤い服の少女。そう、ノアが声をかける。

「はい。貴女もですか?」

「うん!」

ノアの元気のよい返事を聞き、ニーナは安心した。

ノアの返事を聞き、ニーナは姿勢をただす。

「遅くなりました、わたくしは…」

と、言い出したところでノアが止める。

「折角だから3人そろってから自己紹介しようよ。最後のコ、時間かかってるみたいだから、とりあえずお部屋で待と?」

ノアの提案に「そうですね」と答えるニーナ。

そして、先に2人で部屋に入ってみる。

ドアを開けると、そこは玄関スペース。3人がゆったり使えるスペースが確保されている。短い廊下を進み、ドアをあけるとリビングだ。3人で使えるテーブル。

「まぁ、お台所までついてるんですね!」

と、ニーナが感嘆の声。リビングには簡単な調理やお茶を淹れるくらいは出来そうなキッチンスペースが確保されている。

そのリビングからはドアはないが個々の部屋へと別れている。プライベートな空間は確保されている様だ。

「あ、あたしの荷物あった。じゃあ、ここがあたしの部屋ね」

と、たまたま覗いた部屋に自分の荷物を確認する。

「わたくしのも此方に。あ、折角ですからお茶でも淹れましょう」

と、ニーナは荷物からお茶の道具を取り出し、手際よくテーブルに並べていく。

飲み水用の水を適量とり、火をつけ、お湯を沸かし始める。

ノアはその間にも部屋の確認をする。

「あ、ちょっと来て~、すごいよ~」

と、大きな声でニーナを呼ぶ。

リビングとは違う廊下の戸を開くとリビングと同じくらいの広い部屋があった。こちらはとりわけ何かが用意されているわけではない。簡素な小さなテーブルが1つ。

「何に使う部屋なのでしょうね?」

「ね、トレーニングとかに使えそうだよね」

と、話をしているとトントントンと玄関の戸を叩く音。

「「来た!」」

2人は最後の1人を出迎えた。

「はーい」

ニーナが戸をあけるとそこにいたのは艶やかな黒髪の長身の少女。そう、ナイルだ。

「すまない、遅くなってしまったかな?コの番号の部屋はここだろうか?」

ナイルに鍵番号の札を見せられ、間違いない事を確認する2人。

「待ってたわよ~。さ、入って入って!」

とノアはナイルを部屋の中に入るように促した。

ノアに急かされる様に部屋に入るナイル。

「こちらが貴女の部屋になりますが、大丈夫ですか?

「ああ、問題ない。ありがとう」

「今、お茶を淹れますから向こうでお話ししましょ」

「ああ、分かった。すぐ行く」

そう言い、ニーナはリビングに戻り手際よく3人分のお茶を淹れる。

部屋中に広がる香りを楽しんだあと、注がれた液体をまじまじと見るナイル。

「いい香りだ。話には聞いていたが、西の国のお茶は本当に紅いんだな」

ナイルは初めて見て味わう西側の紅茶に興味津々だ。

たっぷり香りを嗅いでから飲む。

「んー。おいしいものだな♪」

「うふふ、ありがとうございます」

「そう言えば、2人は自己紹介はされたのか?」

まだ、と声をそろえるニーナとノア。

「そうか。じゃあ、私からしよう」

ナイルはカップを置き、姿勢を正す。

「私はナイル。ナイル・フォン・アークザイン。アークザイン王家の者だ。精霊魔法科に入った」

「へぇ~、貴女お姫様だったんだ~」

と感心するノア。

「ああ、その事で、おまえ達にお願いがある」

「なんです?」と、ニーナ。

「ここでは、私の事は王女扱いしないで欲しい。同じ部屋の学友。気遣いは一切無用だ」

そう言いにこりと微笑むナイル。

「なんだ、そんなこと?全然オーケーよ。あたし堅苦しいの苦手だし、ヨロシクねナイル!」

「ああ、宜しく。それから、私はまだ西側の事には不馴れなことばかりだ。その辺りも色々と教えて欲しい」

「かしこまりました、ナイル。では次はわたくしが」

と姿勢をただすニーナ。

「ニーナ・カンダーナと申します。王国の孤児院から参りました。神聖魔法科に入学しました。孤児院できょうだい達の面倒もみてましたからお料理が得意です。それから、森の孤児院でしたので狩りもしていましたので弓の扱いには少し自身があります。」

ニーナは丁寧に挨拶する。

「もっと気楽で構わないのだが…」とナイル。

「いえ、これでも十分に気楽にしてます。話し方は身に付いた性分ですからお気になさらず、ね」

そうか。とナイル。

「じゃあ、最後はあたしね!」

ノアは立ち上がり胸を張りながら自己紹介する。

「ノアよ!ノア・セリーナ!セリーナキャラバンっていうキャラバンの商隊で生まれて育ったの。だから故郷といえる様な国はないかなぁ…」

ノアは続ける。

「黒魔法科に入ってる。キャラバンで育ったから無駄に土地勘があったり、調度品とか特産品に詳しいかな?」

ナイルのアークザインにも行ったことあるのよ!と付け加える。

「それから、あたしは人の歴史の中で一番の魔法使いになる予定だから、そこのところヨロシクね!」

と、ウインク。


そして、会食の時間まで色々な話をしながら過ごしたのだ。

これが、後の三聖人の初めての邂逅である。

この頃の3人は、夢と希望を胸に秘めていた年相応の少女達だ。近い未来、堕神との戦いの中心人物になっていくことなど、知る由もなかったのだ。

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