第47話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ 19

 かご一杯のお菓子と引き換えに契約が成立し、ノアはあれこれ呟きながら出した大きな紙に魔法陣を書いていく。ひげをゆらし、猫耳をぴくぴくさせながら。

「できたぁ」

 筆を置くと魔法陣は淡く光る。ルイにはそれしか見えないがテオはそこから上に昇る魔力が見える。天井の青空を越えて伸びていく。

『ありがとう。』

 ルイとノアには聞こえる声でマリアは礼を述べ、優雅に一礼する。

「ごきげんよう、マリアさん。」

 ルイは潤んだ眼で別れを告げる。消えるよりはずっと良い。そう思っても。

『それから、王太子殿下。』

 聞こえも見えもしないテオに近付く。

『これはささやかなお礼ですわ。』

「え?!」

 ルイが驚いた声を上げた。

「ありがとう」

 テオは頬が一瞬冷たく感じ、知らない女性の声が聞こえた気がした。一瞬魔法陣の上の光が増し、それが上に昇って行ったように見えた。

「浮気ぃ?」

 テオもやるねぇ。へらへらとノアが笑って、ルイは何となく悄然としている。

「何の話だよ。」

 むっとして言う。

「口付けぇ。」

 とんとんとノアは自分の頬をつついて見せる。

 もしかしてさっきの冷たいのは…。

 ごしごしと頬を擦り、はっとしてルイを見ると目を逸らされた。

 ええええ!そんな、そんな…。

「まあいいやぁ、騒がしいから行くねぇ」

 余計なことを言うだけ言ってノアは消えてしまう。後には気まずい二人と魔法陣だけが残された。

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