第46話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ 18

「魔王って?」

 踊りながら聞く。一度しか経験はないが足捌きもルイとは違う。別の人間だ。本当は今頃ルイと、本物のルイと踊っていたはずなのに。

「あら、ルイじゃありませんわよ。」

 言っておきますけど。マリアはにっこりと笑みを浮かべる。幾分の安堵をテオは表には出さない。

「貴方の容姿、好みなのよ。」

 それで動けるようになってから良く見に行っていた。

「それは光栄だ。」

 テオもにこりと笑う。

「そういう心にもない笑顔で仰りながら、目が怖いところが魔王ですのよ。」

 むっとした顔でマリアは言う。良く見ていたから知っている。優しげな風貌のテオのルイが絡んだ時の苛烈さを。今も視線だけで恐怖を感じる。

「だから貴方は選ばないつもりだったのに。」

 好みの背格好の男性がお相手の女性とお誂え向きに二人きりで来たから取り憑いてみれば、それがよりにもよってこの二人だったとは。

「何で今日に限って髪の色が違うんですの?最期の一曲ですのに。」

「…最期?」

「ええ。貴方ならご存知でしょう?私がいつ亡くなったか。」

「確か、入学後の最初の舞踏会の直前、だったか。」

「ええ、そうですわ、それで、…気がついたら学校ここにいましたの。」

「家はどうしたんだ?親は?」

「っ私だって帰りたかったですわ!両親にも会いたかったわ!詫びたかった!まさか階段から落ちたくらいで…」

「いや、済まない。」

 死因も知っているテオは何とも言えなくなった。涙ぐむマリアに密かに慌てる。中身がどうあれルイを泣かせたくはない。

「出られないんですの。学校ここ

 寂しげにマリアは言う。結界の所為かとテオは思う。思わぬところに作用しているものだ。

「だからもう、消えようと思っていたんですわ。」

 そうして階下より聞こえていた曲が終わった。

 マリアは微笑む。

「ありがとう存じます殿下。良い思い出で…目です…」

 微笑みが消え不安げな表情になる。

「?」

「駄目です!消えるなんて!」

「ルイ!」

 ルイが叫ぶ。テオはその身体を抱き締める。

「マリアさん!待って下さい!」

 それに構わずルイは中空に呼び掛ける。テオもその方向を見上げるがそこには煌めく星々があるだけだ。

「テオ様!ノア様を呼んで頂けませんか?!」

「え?あ、わかった。」

 名残惜しくはあるがルイの頼みだ。

「!この方が早い。」

 駆け出そうとして思い付き、テオは魔力を手の平に集めると天井に向けて放つ。満天の星空は青空に変わった。

「誰ぇ?ひとの魔法勝手にぃ、あぁ」

 何だぁテオかぁ。のんびりとノアが現れる。何と半人半獣の姿だ。猫耳が動き、尻尾が揺れている。

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