第45話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ 17

 テオの葛藤をよそに階上の広間に入るとルイはぽうっと天井を見上げる。そこは夜空だった。

 魔法で満天の星空になっていたのだ。

 テオは思う。あんなやつなのにこういう演出は上手いよな。まあ、いかにもフレイヤの好みそうな魔法ではある。

「………あ…」

 しばらく見蕩れていたルイが何かに気付いたように声を上げた。

「?どうしたの?」

「…いえ、何でもありませんわ。」

 くるりと振り返ると微笑んだ。

 テオの方に手を伸べる。

「踊りましょう?」

 その手を掴むとテオは引き寄せる。

「ああ、…ところで君は誰かな?」

 覗き込むようにテオはその顔を見る。

「え?…誰って貴方の…」

「誰だ?」

 言いかけるのを遮られ睨む、が気づく。

「…え?その顔もしかして貴方、テオ・ハワード皇太子殿下でらっしゃるの?…嘘でしょ?何でそんな髪の色なさってるのよ?」

「そんなことはどうでも良い。ルイはどうした。」

 ざわ、とテオの気配が膨れ上がる。

「え?この身体、ルイなの?どうして二人して髪色変えてるのよ。」

「だからどうでも良い。ルイは?」

 ぐ、と手を握る。どうしてルイのことを知ってるとか、何故今その状態だとか、どうでも良い。ルイを返せ。

「痛いっルイの手を潰す気かしら?!」

 はっとテオは力を緩める。

「ルイは今中に居るわ。危害なんか加えないわよ。あんな優しい子に。」

「…で、君は誰。」

 少し気を鎮めてテオは再度問う。

「名乗ってもご存知ないわ。」

「良いから名乗りたまえ。君をルイとは呼びたくない。」

「…マリア・ローレンスと申します。」

 ルイの身体は一つ溜め息を吐くと名乗った。

「…やはり死者か。」

 テオも息を吐く。

「やはりって私の名をご存知なの?!」

「ああ、学校の資料に載っていた。」

 事故死した女生徒。それが今、どういうわけかルイの中に宿っているらしい。

「さすが御自慢の王子様ね。それはそうと、踊っていただけないかしら?この際貴方魔王でも構わないわ。」

 魅惑的に微笑む。

「ルイを返すなら。」

 無感情に微笑み返す。

「勿論よ。気付かれないうちに踊ってお別れするつもりだったのよ?」

 貴方気付くんですもの。つんとそっぽを向く。

「…なら、踊ろう。」

 大変不本意だが、現状それしかルイを取り戻す方法がわからない。

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