第40話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ 12

「これ、は…。」

 およそ自分には似つかわしくない可愛らしい衣装にエレノアは言葉を失う。

「私とディランで作った。」

「…そう、か…。」

 フレイヤの言葉に『着られるか』とは言えなくなった。

「大丈夫。似合う。絶対。」

「そう、だろうか。」

 不安を抱えながらエレノアは着替えに入った。

 エレノアは衣装の可愛らしさに気後れしているようだったが、鏡を覗くと数秒止まった。

「ね?似合う。」

「…うん。」

 エレノアは膨らむ裾を翻してくるりと廻るとふふ、と微笑んだ。

 その顔はディランに取っておいて欲しかったな。

 本当は意匠もディランと二人で激論を交わし纏め上げたのものだ。エレノアに似合う『可愛い』そしてエレノアが着てくれるぎりぎりの線を。

「可愛い。」

「…ありがとう。」

 心からの賛辞にエレノアは照れながら微笑む。

 いつも格好良く凛としているエレノアだが、幼い頃はふわふわの可愛い服を良く着ていた。

 春の日差しのような淡い金色のゆるく波打つ髪に新緑の目。天使のような美少女だった。

 可愛いと褒めると照れながら嬉しそうにするエレノアは本当に可愛かった。

 家の事情と背が伸びたことですっかりそういうものを身に付けなくなったエレノアにもう一度可愛くなって欲しかった。今でも可愛いのが大好きなんだから。

「お礼、言わなきゃ。」

 ディランに。自分よりエレノアの魅力をわかってるのがちょっと、悔しいけど。

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