第39話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ 11

 せっかく勇んで行ったものの、あいにく列は打ち切られていた。これ以上は仮面舞踏会に間に合わなくなるとのこと。ルイがややほっとしているのに二人はこっそり目配せして微笑んだ。

 アイラはイーサンを探して術の解除片付けの手伝いがてら中を見せてもらえるよう頼むと言うのでそこで別れた。


 仕方なくまだ残っている模擬店を眺めながら引き返す。

 途中でディランと出会った。いつもと違い、大きめの図案帳を持っている。皆の工夫を凝らした仮装を書き留めていたらしい。

「ごきげんよう、ディラン様!」

「ごきげんよう、ルイ様、チェンバレン嬢、楽しんでおられますか?」

「ええ、お陰様で楽しく過ごしております。」

 心からの笑顔にディランもつられる。

「それは良かった。殿下も頑張ったかいがありますね。」

「あの、…」

「…もう準備に向かわれましたよ?」

 殿下と聞いて言いかけるのを察し、ディランは言う。

「そう、なのですね。…では私達もそろそろ準備に参らねばなりません。ごきげんよう、ディラン様。」

「ええ、ごきげんよう。」

 ディランは残念そうなルイを、ルイ達を見送ると思わず微笑み、それから含み笑う。

 そろそろエレノアが自分の衣装を目にする頃だ。

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