第35話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ7
「どうなさったのですか?」
その場面で間が悪くルイが箱を抱えて戻ってきた。
「アイラちゃん?」
泣き腫らしたアイラに驚いて駆け寄る。蔦も消えているこの状況は明らかにイライザに不利だ。周囲は顔を見合わせる。が、イライザは真摯に跪いた。
「私が!無礼を働きました。謝罪いたします!」
実際やり過ぎた。泣くようなタマじゃないと思ってたのに。相手の事情も知ろうとしなかった。
「謝罪を受けるわ。」
ぶうと膨れてアイラは言う。
「ただし、三遍回ってワンって言ったらね。」
「はぁ?何言って」
ただでは許さないというアイラにまたも炎上しそうなその時。
「私がします!」
「え?」
「ちょっと待っ」
二人が止める間もなくルイは裾を翻してくるくると踊るように三回廻ると握った両手をあげて
「わん♪…これで仲直り、ですよ?」
ぺかー、と明るい笑みを浮かべるルイに周囲の何名かの男子生徒は鼻血を噴いて倒れ女生徒の数名が失神した。
その数名にはイライザも含まれる。
アイラは青ざめる。
「なんて…可愛いの…ダメ…殺される…殿下に…」
ぶつぶつと呟くと立ったまま失神しているイライザを揺する。
「どうしてくれるのよ!殿下に知れたら!」
「!ありがとうございます!!!」
揺すられて意識を取り戻したイライザはアイラの両手を握って礼を言う。
「はぁ?」
「あんなに可愛いルイちゃんを見られるなんて!!なんて眼福!!!」
イライザは感極まってアイラに抱きついた。
「さすがです!!」
「えぇ…ありが、とう…?」
完全にアイラは引いている。
「アイラちゃん?これ今お配りしませんか?」
「え?ちょっと何?何で今?」
イライザが振り返るとルイは箱からリボン飾りを取り出して見せた。アイラは慌てる。
橙と紫のリボンに黒い蝙蝠をあしらったもの。
お化けかぼちゃまつりに相応しい飾りだ。
ええ?!可愛い!と周囲から歓声が上がる。
その歓声にアイラはかああ、と真っ赤になる。
「皆さんにってアイラちゃんが作って下さったんです!可愛いですよね?明日皆で身につけませんか?」
わあ、と沸き、係全員にアイラとルイから次々と手渡されていく。
「そんな、大したことじゃ、め、迷惑いっぱいかけたし…」
皆にそれぞれ礼を言われ、ほめられアイラはあわあわと答えている。
「店員さんの印って感じでわくわくします!」
ルイが嬉しそうに言うとアイラは照れ臭そうに微笑んだ。
「あ、こちらは…?」
片翼しかない蝙蝠が付いたものがありルイは首をかしげる。
「あ、それ!」
アイラぱっとそれを隠すように持つ。
「
アイラは頬を染めてぽつりと呟いた。アイラの胸元には同じく片翼の蝙蝠。よく見ると反対の羽根が欠けている。
「ね、アイラちゃん、可愛いんです。」
リボン飾りをイライザに渡しながらルイは微笑んだ。
イライザはそんなルイとアイラを見る。
「全く。しょうがない方ですわ。」
イライザもくすりと微笑んだ。
「っ何笑ってるのよ!…もう」
笑顔のルイとイライザにアイラもやがて笑顔になる。
そうしてお祭り前夜は過ぎていった。
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