第32話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ4

「あまりテオをからかわないで下さいよ。」

 ディランに呼び止められた。

 ひやひやします。そんな風につついては下手したら怒らせかねない。

 あれは怒らせてはいけない男だ。

「あの程度で怒るような男にルイは任せられんな。」

 エレノアはふんと鼻を鳴らす。

「全く、何でそんなに邪魔をしたがるんです?」

「失敬な。妹を悪漢から守るのは当然のことだろう。」

 悪漢て、あんたがたは友人同士でしょうに。

「自分だけ相手が居ないからやっかんでるんじゃないですか?だったら俺と…」

 そこまで言って盛大な独り言だったことに気付く。くそ、逃げ足の速い。怒らせてでもと思って言ったのに派手に空振ってしまった。

 事実ちらとそんな噂も聞こえてきたので、ちょっと釘を刺すつもりもあった。


 エレノアは腹を立てていた。聞こえていたのだ。周りからもそう見られていたとは。自分には自分の思惑もあるのだ。苛立ちを押さえ込みながら寮へ向かう。

 諸事情あって寮に戻ったところでエレノアに参加できることは少ないが。

 角を曲がると大荷物を抱えた生徒とぶつかりそうになる。

 お互いぎりぎりで躱す。

「!寮長!申し訳ございません!」

「いや、こちらこそ済まなかった。」

 ルイの同級生のイライザだ。なかなかの体捌きでエレノアとしては次期寮長となりうると密かに思っている。

 やや資質に難ありなのだが。

「持とう。」

 大荷物を手伝う。これなら出来る。

「ありがとうございます!」

 二人で模擬店まで荷物を運ぶ。

 寮が近付くとイライザは何かに思い至ったようで挨拶もそこそこに駆け出し、エレノアはまたかと首を振る。アレさえなければな。

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