第31話 かぼちゃとおバケの大騒ぎ3
「今何と?」
テオは笑顔を引きつらせる。
「だから、我々の店の目玉商品は、『数量限定ルイちゃんの焼き菓子、お祭り仕様』だ。なにか問題があるか?」
しれ、とエレノアは言ってのける。テオの愛するルイの手作りの焼き菓子。ルイは学校で男女共に非常に人気の高い女生徒だ。すぐに争奪戦になる未来しか見えない。
混乱を来さないよう何か手を打たねば。
そもそも、その前にルイの焼き菓子はテオにとって特別なものだ。その味わいを他人と共有するなんて。
「問題あるに決まっているだろう。何でだい?あれは僕だけのものなのに。」
やや焦ったようにテオは言う。
「お前こそ何を言う。そもそもルイの焼き菓子ならば私とて食べたことがある。」
「なっ」
「それにルイは『お店やさん』をとても楽しみにしているぞ。邪魔をするのか?」
「うっ」
「独占欲の塊だな。そんなに束縛すると嫌われるぞ。」
「ぐっ」
がん、とその言葉をぶつけられたような顔をするテオにエレノアは含み笑う。
「そもそも何故ルイから聞かされていないのだ?」
エレノアは止めを刺す。
テオはふらりとよろめく。
「…会えてないんだ。」
絞り出すように言う。
お互いに忙しく、ゆっくり話も出来ないまま、もう明日はお祭り当日。
そんな大事なことは本人の口から聞きたかった。
もしかして、大事だと思われてない?…嗚呼。
一人落ち込むテオにエレノアは更に告げる。
「ああそうだ、ルイがどんな仮装をするかは秘密だ。」
エレノアは意地悪く笑む。皆顔を全て覆う仮面を身につけ、仮装する舞踏会。
どんな仮装かお互いに示し合わせていないと見つけるのは困難だろう。
「見つけられれば、踊る許可をやろう。」
エレノアはそれをわかっていて打ち合わせられないテオに告げている。
「…わかった。」
接触禁止令限定解除。それでもテオはその申し出に縋るより他はない。
是が非でもルイを見つける。そしてルイと踊るんだ!
「せいぜい早く見つけることだ。」
ふふんと笑うとエレノアはその場を辞した。
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