第18話 ディランとエレノア 3
輝く灯り、きらびやかなドレスの女生徒達。
中でも一番輝いているのはエレノアだ。
ドレスがエレノアの美しさを一層際立たせている。
自画自賛だが。
やはり美しい女性には美しいドレス。
頑張った甲斐がある。
「エレノア、綺麗ね。」
ルイも可愛い。
彼女なりの
微笑みで応える。
「フレイヤ様も今日は一段とお美しい。」
「ありがと」
相変わらずの無表情でフレイヤは去っていく。
テオは全体を見渡せる位置で談笑している。
視界の中にルイを入れ、完全に会話には上の空なのが見てとれる。
いざという時助け船を出せるように側に立つ。
それでも会話には自動的に的確に返事をする。
本当に変な人だ。
ふと気付けば場所を移動していた。
目の前には夜会服のノア。
フレイヤを褒めた所為かと思ったが違った。
「ちゃんとしてるぅ?」
どうやら確認して欲しいらしい。
不安そうで意外だ。
「…大丈夫ですよ。」
ぐるりと見回してから答える。
言われた通りにちゃんと着ている。
着こなして、とは言えないが。
「ありがとうぅ先生ぃ」
気付くとまた元の場所。
まだ曲は続いていた。
そうぽんぽん移動させないで欲しい。
こっちでも先生、か。
悪い気はしないな。
ふぅ、と灯りが消えて、代わりに魔法の炎がゆらゆらと立ちのぼる。
ノアが来たようだ。
テオはこれ幸いと闇に紛れて広間から出ていく。
自分も後に続く。
「テオ様こちらへ」
用意してある部屋に入る。
「本当に着るんですね。」
衝立の陰で着替えるテオにやや呆れながら声を掛ける。
「そういう約束だろう。」
それに、折角用意して貰ったのだから。
あまり抵抗は無いらしい。
そこが誤算だったか。
「こうか?」
聞かれたので衝立を覗く。
「似合いますね。」
さすが俺。
背中を直してやりながら言うと、テオはやや渋い顔をする。
「女性とは大変なのだな。」
動きづらい、とテオ。
「じゃ、俺は行きますね。」
椅子を出してやると部屋を後にする。
広間に戻ると何人かから王太子の行方を聞かれる。
曖昧に濁してエレノアを探す。
誰かと踊って来たらしい。
「俺とも踊って頂けますね?」
目に妬心を浮かべた。
「またそういう言い方を。」
エレノアは軽く流す。
「あれ?そういえばフレイヤ様は?」
ややわざとらしいか?と思いながら聞く。
「先ほど部屋へ戻ると。」
「そうなんですね。」
お見掛けしたときお顔の色が優れなかったようでしたから。
エレノアは眉を寄せる。
「では私も。」
帰ろうとするエレノアを制する。
「約束を違えられますか?」
報酬だろう、と。
「しかし…」
「ルイ様にお願いしましょう。」
ね。
にっこり微笑むとエレノアは胡散臭そうに見る。
暫し考えるとエレノアはルイに声を掛けた。
先に戻ってフレイヤと居るようにと。
何も疑わず、ルイは広間を出ていく。
素直過ぎるだろう。エレノアの心配までして。全く。
「…何を企んでいる?」
踊りだしてから聞かれた。
「心外ですね。」
ああ、やっぱり何か気付かれたか。
「フレイヤも噛んでいるのだろう?」
エレノアがやや睨むように見上げてくる。
フレイヤが関わっているから見逃してくれたのか。
「…俺、背が伸びて良かったです。」
エレノアより視線が高いのが単純に嬉しい。
「話を逸らすな。」
「だって、釣り合うでしょう?」
貴女と。
ぐっと腰に添えた手に力を入れる。
エレノアは咄嗟に身を引こうとするが許さない。
「笑顔でお願いしますよ、エレノア。」
俺が何か失礼をしてると疑われる。
「お前はいつも失礼だ。」
にっこりと微笑みながらエレノアは言う。
「それは酷い。」
誤解ですよ。
こちらも笑顔で言うが全く信じてない。
「どうしたら信じてくれるんでしょうね。」
半ば独り言のように言う。
エレノアはこの距離なのに聞こえない振りだ。
公衆の面前で口付けてやろうか。
「…大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫ですよ。」
またルイの心配。
少なくともあの格好でテオが危害を加えることは無いだろう。
それに今はルイの方が身軽に動ける。
「…随分と、お気に入りですね。」
「私のものだからな。」
型通りに答える。
「反対なさいますか?」
テオ様とのこと。
「…それはルイが決めることだ。」
間があった。
果たしてそうかな。と思う。
こんなところに伏兵がいるとは、テオも思っていないだろう。
曲が終わり、エレノアが閉会を宣言すると、まだ談笑するものは残して皆三々五々と散っていく。
「エレノアっ」
未だドレスのままのフレイヤが急ぎ足で近付いてくる。
「行こう。」
ルイが倒れ、医務室へ運ばれた。
「俺はお先に。」
寮長達がドレスのまま駆け回っていると騒ぎになる。
二人には着替えてから来るように言い、一足先に向かう。
着替えが済み、渋るテオを寮に連れ帰る。
大変な一日だった。
「怒った?」
道中、事情を説明したフレイヤが黙るエレノアを見る。
「いや、とにかく急ごう。」
隠されていたのが面白くは無いが、フレイヤも考えがあったのだろう。
ちゃんと見ていてくれたようだし。
「怒るかと思って黙ってた。」
フレイヤがぽつりと漏らす。
「私が?」
何故。
「だって…」
ディラン、ちょっと本気で妬いてる。とは言いかねる。
「ルイ、可愛いから。」
「まあな。でも次からはちゃんと教えてくれ。」
何かあってからでは困る。
責めるのはやめた。
「しかし私もその王子を一目見たかったな。」
くくっと笑う。そのまま医務室まで行くとは。
「似合ってた。」
フレイヤも少し笑った。
心配したルイも頑張り過ぎと分かり安堵する。
「あの、ディラン様。」
珍しくルイに呼び止められた。
「今、宜しいでしょうか?」
珍しく一人だ。
「構いませんよ。」
にっこりと営業用の微笑みを浮かべる。一体何の用だろう。
「テオ様に御礼をお伝えしたくて。」
せかせかと話すのも珍しい。
「ご都合の良い日をご存知でしょうか?」
きっと二人を
「ああ、では調べてご連絡します。」
こちらも手短に返答する。
両姫にもテオにもこんなところを見つかったら何を言われるかわからない。
「宜しくお願いいたします。」
御手数を御掛けします。
ルイは
何故か彼女と報酬の話をする気にならなかった。
よし、テオに払わせよう。
さて、二人を会わせるにはどうするか。
ちょうど、もうすぐ休暇だ。
「少し出てきます。」
「何だ、出掛けるのか?」
もうすぐ馬車が来るぞ。
エレノアに聞かれたルイはびく、と止まる。
「はいっ友達に御礼を。」
ぎくしゃくと返事をする。
「そうか、ならば私も…」
「っ大丈夫です!一人で行けます!」
立ち上がろうとすると、慌てて出ていく。
見送って含み笑っているとフレイヤに睨まれた。
「苛めない。」
「可愛くてつい、な。」
あれで隠してるつもりなのが可愛くて仕方ない。
「もう。」
フレイヤに呆れられた。
テオを機を見て外に追い出す。
喜怒入り交じった何とも言えない顔で窓を見上げてきた。
感謝して下さいよ。
そう思ってにんまり笑う。
少しして、二人の後をつける。
何かあったら困る。
意外と二人とも気付かない。
ふと気配に気付き振り向くと、両姫が居た。
あちらも一緒か。
目が合う。
「おはようございます。」
「…おはよう。」
両姫はやや不満気な顔。
「ご心配ですか?」
「当たり前だろう。」
心配しない方がどうかしている。
「お前こそ。」
睨まれた。妹、ね。御姉様も大変だ。
「俺は約束がありますから。」
身の安全を保証した。
あんな手紙書くんじゃ無かった。
「誰とだ?」
「内緒です。」
口の前に人差し指を立てるとむっとされる。
「ほら、見失いますよ。」
さらりと逸らした。
三人で後を追った。
温室に向かったのは分かってる。
問題はどこまで近付くかだ。
見つかればテオは何時ものことと気にしないだろうが、内緒のつもりのルイは傷付くかもしれない。
結局見えない所までは近付こうと、話が纏まり、移動しようとした時。
フレイヤが駆け出した。
「どうした?!」
「ルイが!」
エレノアにそれだけ答えて走っていく。後を追った。
ルイを抱き締めたままノアと対峙するテオを見付けた。
ルイの意識は無い。
エレノアが怒って奪う。
怒るんだよなあ。やっぱり。
ルイを奪い取られた所為かテオは悄然とする。
フレイヤはノアを見張りに出していたらしい。なかなか思慮深い。
ノアの直裁な言い方にフレイヤが頭を叩いたので驚いた。
あのノアを叩くなんて、怖いもの知らずもいいところだ。
説明を求められたノアは面倒臭そうに言う。
「ん~とぉ、言葉にぃ縛られてるのぉ」
見ればわかるじゃん~。
ノアにはそれが見えるらしい。
「どうしたら、解放できる?」
衝撃が尾を引いたままのテオが拳を握りしめる。
「えぇ~、知らないぃ」
言ってテオに睨まれ渋々ルイを凝視する。
「剥がせばぁ?傷付くと思うけどぉ」
精神体に絡み付いた呪、ノアには剥がせるようだが、精神体に傷が付く、らしい。
「そんなこと出来るか!」
テオが珍しく人前で乱暴な口調になる。
両姫がその声に驚く。
「落ち着いて下さい。」
声を掛けると凄い目で睨まれた。
落ち着いていられるか!
目がそう言っている。
「落ち着いて下さい。」
もう一度言う。
「…すまない、取り乱した。」
両姫の視線に気付き、テオは平静を取り繕う。
「もう、馬車の用意が出来ております。」
いずれにせよ、今日は城へ戻らなければならない。もう日程を知らせてある。
「フレイヤも?」
テオがフレイヤを振り返る。
フレイヤが戸惑ったように頷く。
「じゃあルイは僕が運ぶ。」
案内して。
有無を言わせずエレノアからルイを受け取り、抱き抱える。
エレノアも何も言えずにルイを渡した。
フレイヤの馬車に運び込む。
頬の涙を拭うと、エレノアの膝を枕に寝かせた。
「もう、良いだろう。」
そろそろ出立だ。
「…ああ。」
エレノアに言われて握っていた手を名残惜しく離す。
ルイはまだ目を覚まさない。
「…ではまた学校で会おう。」
「ああ、じゃあまた。」
ふ、と微笑んでテオは馬車から降りていく。
「王子怖い。」
フレイヤが呟く。
「だな。」
いつも内心はどうあれ、柔和な笑みを浮かべているのに。
あんなにはっきりと怒りを
気圧された。
触れるなとさえ言えなかった。
「あれは、本気で本気だな」
ルイの髪を撫でながらエレノアは言う。
「…うん。」
フレイヤも膝掛けをルイに掛けてやりながら答える。
「家に届けたら手紙でも書くか。」
王子に。
少しは気が晴れるだろう。
「うん。」
フレイヤも賛成した。
目を覚ましたルイは、いつものルイだった。
ほっと胸を撫で下ろす。
一度王子に呪をかけられた時はルイを返すことで頭が一杯になった。
感情や思考は止まり、表情もおそらく止まっていただろう。
ルイは、そんな風には見えない。
ただ、それだけに事態は深刻なのかもしれない。
あの王子が取り乱す位だ。
強いて寝かせて頭を撫でる。
何とか解放してやりたい。
なぜルイがそんな目に遭っているのか。
フレイヤと目を見交わす。
守ろう、と誓った。
ルイが望まなければ王子からも。
もう気圧されたりするものか。
ルイを自宅に送り届け、お茶をご馳走になる。
御両親はとても歓迎してくれた。
優しそうな御両親だ。
さすがルイの御両親。
休みが終わる前に迎えに来るからと約束して辞す。
フレイヤと二人になる。
またフレイヤの邸に世話になるのかと思っていた。
「着いたよ。」
フレイヤが言う。
従者が扉を開けてくれた。
外には召し使い達が、懐かしい顔触れが並んでいる。
執事が扉を開けるとそこには父が立っていた。
「エレノア!よく、よく帰って…」
駆け下りてきてエレノアを抱き締め、後は声にならない。
「父上…」
泣きそうになる。
ぐっと
フレイヤが珍しく微笑んでいた。
「ディランがね。」
ほぼ唇の動きのみで、こそ、と囁いた。
「また、迎えに来る。」
「フレイヤ嬢、ご足労を掛けた。」
涙声のオルティス公爵に会釈をするとフレイヤは馬車で帰って行った。
邸の様子が前と違って小綺麗になって活気がある。
給金が払えず、仕方なく暇を出した召し使い達が戻って来ている。
「お帰りなさいませお嬢様」
皆がそう迎えてくれる。
まるで母が生きていた頃のようだ。
「父上、一体…」
ディランから金が渡ったとしても一時的なものだ。
召し使いを増やせる程は無いはず。
「良い、先生を得てな。」
やや青ざめて見えたのは気のせいか。
父には美術品の目利きの才があったようだ。
まず家に有る不要な美術品を売るよう勧めた先生がそれに気付いた。
指導を受けて小作料も滞りなく納められるようになり、家計は安定したらしい。どれだけ領地の管理に穴があったのか。
当初は人気が出そうな美術品を買って、値上がりしたら売っていた。
今はむしろオルティス公爵が認めた品、で高値が付くようになったと。
それもこれも先生のお陰、と父は言った。
他にも投資やら何やらで一定の安定した収入があるらしい。
「父上、その先生というのは?」
「…、いや、それはまたいずれ。」
何だか歯切れが悪い。
「騙されては」
「いや、むしろ…」
騙されそうになるのを何度か救われた位だ。
が、娘には言いかねた。
それに実は未だに顔も名前も知らない。
「いや、良い先生でな。」
大丈夫だ。
エレノアの肩に手を置く。
「よく無事に帰って来てくれた。」
父はまた涙ぐむ。
「はい。」
何とも返事をしようがない。
「勝手をして申し訳ありません。」
黙って出ていき、帰らなかった。
「いや、むしろ詫びるのは私の方だ。」
亡き妻の思い出に閉じ籠っているうちに大切な娘を失う所だった。
「不甲斐ない父で済まなかった。」
だがこれからは苦労はさせない、と父は言う。
学費も払えるし、何処へでも行かせてやれる。
驚いた。
母を亡くしてからずっと沈んで塞ぎ込んでいた父が晴れやかな顔をしている。
どうやら本当に良い先生と出会えたのだろう。
何者なのかは気になる所だが。
「良い、先生なのですね。」
「ああ、うむ。」
父は少し顔を曇らせたように見えた。
「それより食事にしよう。お前が帰るからとアメリアが腕に
誤魔化されたかな、とは思いながらもエレノアは久しぶりの邸の様子に微笑んだ。
本当に娘が無事に帰って来た。
先生は約束を違えなかった。
二度と会えないのではないかと、それに、酷い真似をされているのではと心配していた。
娘は無事に、学校にまで入って、そして学友と戻って来た。
信じられない思いで娘を見る。
あの男は何故何の得にも…。
そこまで考えてさあ、と血の気が引く。
とんでもない婿が来そうだ。
「エレノア、親しくしている方はいるのか?」
それとなく娘に訊ねる。
「フレイヤと、あと、ルイと言う名の…」
「男か?」
男のような名を聞いてすわと思う。
「いえ、伯爵家の令嬢です。可愛くて、まるで妹が出来たようです。」
エレノアは不思議そうな顔をしたあと、思い出して微笑んだ。
「…そう、か。」
嬉しそうな娘に、それ以上は聞けなかった。
「今度うちに招いても?」
「ああ、勿論だ。」
会うのが楽しみだ。
そう娘に微笑み返した。
幼い頃のような穏やかな日々。
自分がこの身を売ろうとしたことなど忘れそうになる。
しかし自分はもはやディランの持ちものだ。
それは娘が戻ったと喜ぶ父には言えなかった。
ディランはあの時もっと高く売ってやる、と言った。
価値を上げるために学校にも入れたのだろう。
きっと卒業する頃には買い手が決まっている。
悲しくないと言えば嘘になるが、活気が戻った邸を見れば、そう悪くはない。
しかし、卒業まではフレイヤやルイの側に居たい。
いや、居るつもりだ。
ディランと交渉しなければ。
今頃エレノアは
フレイヤに、邸まで送るように頼んだ。
怪訝な顔をしていた。
「いいの?」
まだ帰さなくて良いと思う。
フレイヤはそう言った。
エレノアはもっと怒るべきで、父親はもっと反省するべき、と。
フレイヤがどこまで事情を知っているかは知らない。
ただの親子喧嘩と思って言っているのかも。
「それにまだ…」
言いかけて、ごめん、余計。と謝られた。
「良いんですよ。」
よろしくお願いしますね。と笑みを浮かべた。
やせ我慢、かな。
城へ戻ったテオは公務をこなし、式典をこなし、父母や義姉との和やかな会話をこなし、調べものをし、話を聞きに行き、とにかく疲れを見せず、精力的に動いていた。
「僕は用があるから、暫く学校へは戻らない。」
急にそう言われた。
「付き合いますよ。」
「いや、良い。」
それよりフレイヤの馬車に付き添ってくれ。あと学校には公務と。
次々に指示を出される。
「何か懸念が?」
そんな情報は掴んでないが。
焦っているように見えるテオを不思議に思う。
「いや」
特にそんな情報はない。
「じゃあ何を焦ってるんです?」
「焦る?」
自覚が無い。
「はい。」
「…分からない、な。」
考えを巡らし額に手を当てる。
ルイの件は急ぐ案件ではないはずだ。
むしろ時間を掛けるべき。
焦っても良いことは無い。
何か危険が迫っているというならともかく、言霊の主はこちらが気付いたことすら知らないだろう。
「皆を、頼む。」
「ルイ様を、でしょう?」
からかうと、ふ、と微笑った。
「ああ、頼む。」
「承りました。」
やはり何処かいつもと違う。
フレイヤの馬車に護衛として付く。
馬車の脇でフレイヤをお辞儀で迎えると一瞬フレイヤが固まる。
「よろしく。」
フレイヤは無表情に声を掛けると馬車に乗り込んだ。
わざわざ今何も聞かないのがフレイヤらしい。
自分も御者の隣に座を占めると覆面を身に付ける。
そのままエレノアの邸へ向かい、ルイの家へ向かう。
オルティス公爵邸で見送りの者達に手を振ると、何人かは気付いて凍り付いた。含み笑う。
道中は何事も無く、学校に着いた。
やはり考え過ぎだったか。
後手に回るよりは良いが。
「何故君がここに居る?」
馬車を帰し、エレノアの声に振り返る。
「護衛ですよ。」
テオに命じられました。
「危険が迫っているのか?」
エレノアの顔に緊張が走る。
「念のため、ですよ。」
努めて何でもないように言う。
テオが妙に焦っていたことは言わない。
「なら良いが。」
少し緊張を解く。
そのままエレノアは何かを言おうとして黙る。
「…王子はどうした?」
一緒じゃないのだな。
明らかに別の話題。
「公務です。」
さらりと答える。
「…そうか。」
また黙る。
「何か?」
用があるのだろう。さっきから。
「…いや。またにする。」
言いかねてエレノアはルイのもとへ戻っていく。
「…?」
考えることが色々ありすぎる。
エレノアの屈託は話してもらうまで保留とする。
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