九月二十七日
今日は日曜日、現世の多くの人は休日だ。【艦霊】もそれに倣い一部の当番を残し、それぞれ心身のリフレッシュにあてている。俺はというと退役まで残すところ片手にも足りない日数ということもあり、ここ一ヶ月ほぼ毎日が休日だ。仕事がない……要するに無職の状態なんて生まれてから初めてのことで、時間を持て余しているのが正直なところだ。暇つぶしに屋敷の玄関で紫煙をくゆらせれば、灰皿代わりの空き缶はあっという間に吸殻だらけになった。
「あっ、ながちゃん。俺もいいー?」
「おー、いいぞ」
菅仁が俺の横に座り、煙草に火をつける。薄暗い玄関の天井に青白い煙が二本昇っていく。
「ながちゃんって、何型だっけ?」
「はい?」
菅仁の突拍子のない発言に驚き灰がズボンに落ちる。灰を払いながら菅仁の顔を見ると、菅仁はほんの少しだけ眉を下げ笑っていた。
「うわじま型だよ。後期のな」
「『680』なのに?」
「誰がすがしま型だ。今は『732』だからその理屈は無駄だぞ」
「……」
「……」
「今年は……除籍が多いな」
一瞬の沈黙の後、菅仁が小さくこぼした。
「【げんかい】が大忙しだな」
淋しいと素直に言えないのは寂しい。だが、菅仁はそういう【艦霊】なのだ。二人ほぼ同時に新しい煙草に火をつけた。俺たちの間には丁度人が一人座れるだけの距離が空けられていた。
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