九月五日

台風が迫っているとは思えない程に穏やかな呉港に灰色の艦艇と黒色の潜水艦。モノトーンな海上の風景のその中で一際目立つアラートオレンジの艦……【砕氷艦しらせ】が昨日より停泊していた。

「いらっしゃい、【しらせ】」

「パーティーする?」

「密です。パーティーなら【道】ですればいいでしょう?」

はるばる東からやって来た珍しい艦を拝みに来た、そんな態度を隠さずに見に行けば、政治家のようなことを言われて距離を取られてしまった。

「今日、俺らおっさんオンリーのおっさんパーティーだから若い子も見たいなーって思って」

「ペンギン連れていこうかなーと思って」

「艦内にはいれませんよ。ほら、これあげますから早く行ってきたらどうです?」

【しらせ】はそういうと俺たちの掌に可愛いペンギンのピンバッジを転がした。

「……これがソーシャルディスタンス?」

「そうかもな」

「若い子扱いですよ」


鬼灯よりもあかい艦が揺られる。長い夏はもうすぐ終わる。

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