八月二日 Hバース最後の夜
長かった梅雨が明け夏の空にカシオペアが輝く。建物が邪魔で少々見にくいが、ここからの眺めも最後だと背伸びしてみる。
「うーん、やっぱり見にくいなぁ」
無法地帯……101掃の隊舎ちょうど真後ろに所属する隊のシンボル、カシオペアが見られるなんていうのは中々にロマンチックなのではないだろうか。惜しむらくは半生を共にした弟兼相棒がいないことだ。ポケットから携帯端末を取り出して、カメラを起動する。カシオペアが入るように構えてみるも画面に映し出されるのは夜の闇ばかりだった。
「写らないか」
ちょいちょいと明るさや色味を弄ってみるも俺の技術ではどうにもならないらしい。艇の前をフェリーが通ると、その波に揺られて艀がギイギイと音をたてて鳴る。自分と同じ灰色の桟橋を見る。明日、SAMを残してはいくものの、このバースを使用する自衛隊の艦艇は居なくなる。
「長い間お疲れ様」
揺れる桟橋に声をかけた。返事はもちろん返ってこない。
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