十二月十四日 別府国際観光港
津久見も西大分も水深が浅くてヤダナーと尻込みした結果、やって来たのは湯けむりの街、別府。昨日出迎えてくれたのは、警戒心が強くてさっさと逃げるくせに餌をくれるおじさんとおばさんが大好きな猫ファミリー。無論、さっさと逃げられてしまったので心温まる触れ合いは一切ない。一般公開の間は【艦霊】が何をしていようが気にする者は少ない。朝のラッパ君が代を聞きながら何をしようか考える。大分といえば鳥料理、別府といえば地獄めぐりに温泉だ。さて本当にどこに行こうか。
「弓から海図借りてきて正解だな」
朝日に照らされる扇山の肌には黄色の枯れ草がみっしりと生えているのだろう、そこだけが毛布をかぶっているように見える。あの少し下がった所に別府名物の地獄温泉があるのだ。バスに乗っていくらしく、それも楽しそうだと思う。
「お土産は何にしようか」
いつの間にかやって来た地本の人が、艇に『自衛隊員募集』とデカデカと書かれた垂れ幕をつけている。まさしく『掃海広報艇』だ。あまりに面白いので弓哉に送る用に一枚写真を撮り、残り少ない人生を楽しむべくバス停を探しに港を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます