十二月十四日 別府国際観光港

 津久見も西大分も水深が浅くてヤダナーと尻込みした結果、やって来たのは湯けむりの街、別府。昨日出迎えてくれたのは、警戒心が強くてさっさと逃げるくせに餌をくれるおじさんとおばさんが大好きな猫ファミリー。無論、さっさと逃げられてしまったので心温まる触れ合いは一切ない。一般公開の間は【艦霊】が何をしていようが気にする者は少ない。朝のラッパ君が代を聞きながら何をしようか考える。大分といえば鳥料理、別府といえば地獄めぐりに温泉だ。さて本当にどこに行こうか。

「弓から海図借りてきて正解だな」

朝日に照らされる扇山の肌には黄色の枯れ草がみっしりと生えているのだろう、そこだけが毛布をかぶっているように見える。あの少し下がった所に別府名物の地獄温泉があるのだ。バスに乗っていくらしく、それも楽しそうだと思う。

「お土産は何にしようか」

いつの間にかやって来た地本の人が、艇に『自衛隊員募集』とデカデカと書かれた垂れ幕をつけている。まさしく『掃海広報艇』だ。あまりに面白いので弓哉に送る用に一枚写真を撮り、残り少ない人生を楽しむべくバス停を探しに港を出た。


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