第2話

しばらく、朝起きては師匠が

「おい、私は今から研究するから出ていけよな、どうせ役立たないんだからさあ、穀潰してめえこの野郎」

とまで言ったかどうかはさておき、師匠が朝になると僕を外に追い出す日々がしばらく続いた。

 追い出された後は僕は釣り少年にダル絡みをし、ふらふら色んなところを歩いたりして時間を潰して、帰ってこいと言う連絡が来るまで時間を潰していた。

 そういえば、釣り少年の名前も判明した。

なんでも、ヒガタというのだそうだ。偽名なんじゃないかと今も疑っている。タナンとかいうふざけた名前の自分が言えることじゃないが。だってヒガタってつまり、干潟だもん。

 そして、そいつに勉学を指導している先生のところで勉強することになり、計算から詐欺の仕方までヒガタと一緒にその先生に内容を日々教えてもらっている。

これが、主な出来事だ。そして、今まさに授業を受けている。

「よーし、じゃあ今日教えたいことも無くなったから終わろうかな。……じゃあ、タナン氏も帰っていいよ」

すると反射的にヒガタが、外に出ようとしているがしかし、まだしなければならないことがあったのか

「おい釣り中毒!君はまだやることがあるだろうが」

と先生に声をかけられた。しかし、その声はすでに見える範囲にはいないヒガタには届かず、僕と、その声を発した先生にしか聞こえない。

あるいは「ど」がつくほどの田舎だから、聞いてくれる人もいないのだろうか。

「……って、にげるなよお」

 寂しげな目でここから一番近い川を見つめていた。僕も同じように見つめると視界には適度に整地され静かで、美しい道、そしてそれを引き立たせすぎないようにむりくり引っ付けたような膝ほどの丈の青々とし、まるで見本のような草っ原が広がりのどかな風景が置かれていた。

「はあ……、タナン氏よ、私はあの釣り中毒を連れて用事に行く。君は帰っていてくれないか?……もしも、帰りがけにあいつに会ったら帰ってくるように言っておいてほしい」

あれ……、先生これ何か勘違いしてないか?

「……あの、僕まだ帰れないんですけど。あ、もちろん連れ戻す手伝いくらいはしますよ」

 先生はぱあっと表情を明るくし一面相、その後かなり驚いたような表情になり二面相、そのあと焦ったりして何面相か表情を変化させていた。特段おもしろくもない百面相をひとしきり終えたのち、話しかけてきた。

「じゃあ改めて手伝ってくれるならありがとう。探しつつ少し質問とかするからね?」

 しばらく歩きながら、師匠やら、連絡やらについてちゃんと話した。

 そういえば、全然師匠についてとか、連絡もらってから帰るとか行ったような説明をし忘れていた。

やっぱり僕は師匠の弟子だと痛感した瞬間だった。




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開始と終了の合図 @14go

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