話したいことはたぶん無い
西山 しお
知ることは、書くことだ
わたしは勉強が苦手だ。
一概に苦手と言っても、やれめんどくさいやら、結果が出なくてつまらないやら、役に立たないやら、だいたいそんな感情が起因しているのだろうと考えるのが一般的だろう。
わたしの心が、これらの感情と重なることは一切ない。
単純に頭に入っていかないのだ。
夜を明かすほどのモチベーション───これはもはや「躁」と喩えても過言ではない───が脳内に宿ろうとも、入ってくる情報は完全に遮断さられる。
高校時代のことだ。
「集中力が続く最大の時間は、およそ2時間だと言われている。だから、2時間集中した後、30分の休憩を取ることがベストだ」
大衆に向け、このセリフを高らかに述べた先生がいた。どんな顔をして、どの科目を担当していたかは、全く思い出せない。
ある日のことだ。
「人間の集中力は90分までしか続かない。例に取れば、大学の講義1コマ、サッカー1試合がその時間にあたる」
いつしか見た、ネットに掲載されていた記事に、このようなことが書かれていた。
わたしの話をしよう。
わたしは英語学習が好きで、しばしば熱を入れて取り組む。
独特の表現や、パズルのような文法など、『英語』自体にも好むところがあるが、私が好んでいるものは『英語学習』というところにある。
わたしが取り入れている学習法に、シャドーイングというものがあり、音声として流れて来た英文を聞き、少し後から追いかけるように声を出して発音をするものだ。そうすることにより、英語というものを、日本語を介すことなく、すばやく理解することができる。
完璧に英文を追えるようになるまで、度重なる反復が求められる。その反復には、地面を踏みならしていく爽快さがあり、否が応でも集中させられる。
では、このシャドーイングをどれほどの間、続けていられるだろうか。
英文の難易度にも拠るが、約40分くらいだ。
そして、一時間ほど休憩を取らなければ、上述のように、情報が遮断される。頭痛にさいなまれるときさえある。
これはほんの一例に過ぎない。
実用書や技術書を読めば、30分ほどで遮断。
講義に関しても同様だ。
これらには共通点がある。
それは、どれもインプットをしているという点だ。
では、アウトプットする際の時間はどうだろう。
物語を綴れば、1,2時間なんてあっという間だ。
初めて書いているこのエッセイも、同様の時間をかけている。
もしかすれば、わたしの脳のハードディスクは、デフラグに忙しいのかもしれない。
これまで培った知識やアイデアの断片をスマートに整頓している最中だ。
知を求めたいわたしは、それらを外へ吐き出してやる必要がある。
これがわたしの小説を書く理由だ。
話したいことはたぶん無い 西山 しお @ishiokaRyota
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