第4話 まぼろし

昔使っていたトレス台を、いくつかのスケッチブックと一緒に処分しました。


ここ十年以上は、捨てるの迷っていました。

もうあの世界には戻れないのに。戻る気もないのに。なぜかすぐには捨てる気にはなれませんでした。


スケッチブックと言っても、数冊、描きかけがあるだけで、今思えば全く描くことには疎かったです。

プロを目指すにはもっと描かなきゃだめだろう、と今更自分を責めてもだめなんですが……。


小説に手を付け始めたのは、十五年くらい前です。

読むことよりも書くことに重きを置き、ひたすら書くことが楽しかったです。

ふと我に返ると、四十代になってから自分よりも若くて知識のある人が、デビューしたり、賞を取ったりしているわけです。

今もたまに本を読みますが、もっと多感な時期に読んでいたら、見る目が変わっていたのかもしれません。


たら、れば、とか書いてる時点で終わりでしょうかね。


ヒット作飛ばす人がいたり、世界的に成功をおさめていたり、この差は何なんだろうなってふと考えたり。


持病に苦しむばかりで、外に出て近くのスーパーに行くだけで、嫌な思いをしてしまい、この感覚はいつまで続くんだろうなと、思わずにはおれません。


身近なことから手を付けていく。


それが、今から、過去からのなすべきことだろうなと思います。

未来がわからないので、努力していけば、道が開けていくだろう――

誰かが言っていたような言葉ですが、それしかありません。


でもそれを信じ続けて十五年かかっても実らないのは、やはり何かが不足しているのか……。

それも、今の自分を見て、過去からの自分を見て、からなのか、僕にはわかりません。


あるとすれば、もっとSNSを駆使するべきか。

もっと他者を重んじるべきか。

思い切って飛び込むべきか。


直さなきゃならない所はあるんでしょう。

わかっちゃいるけど、何もしない。

そうなると、なぜ生きている?なぜここにいる?って疑問が浮かぶ。


何をしたいのか。目指すものがなくなり、次になすべきことは何なのか……。

手の届く範囲に、それが見つからないんです。


作業所行って、職員のアドバイスに従い、課題をクリアしていく。


きっとそれなのでしょう。


ですがそれは、社会復帰を見越しての、訓練やリハビリなので、社会に出て何をすべきか。

何の仕事をするべきか。

そこには消耗しかないように思えて、それが意味のあることにつながらないと感じています。


まぼろしだなあ。

この世界も自分も……。

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