第4話

三十分くらい歩いてきただろうか。突然目の前に、洞穴のような洞窟のような、丸い入り口が顔を出した。一瞬ぎょっとしたが、インプットしてきた地図を辿っていくと、それは【富岳風穴】であることが分かった。〈これが風穴か……〉おそるおそる中をのぞくと、かつては観光地だったようで、階段や通路など整備されていた。しかし、今の時代人間自体が少なくなっていて、こういうところに来る人は皆無だった。暗い通路を先へ進む。チップに埋め込まれたライトが、センサーにより発光していたので暗い道でもよく見えた。中からひんやりと冷気が流れていた。博の耳に、何かが聞こえる気がしていて、何となく気になった。周波数を分析しても、脳からの返答は【解析不能】だった。その答えを確認した博は、すっくと立ち上がり前方を見据えた。まるで、見えない巨大な敵に立ち向かう勇者のように、胸を張り大きく息を吸って一歩を踏み出した。その途端、博は体の自由が利かなくなった。と言うより、四肢がバラバラな気がした。まるで言うことを聞かない。イカかタコのように体をくにゃくにゃ曲げながら、何とか前進した。数歩進むとその奇怪な現象はなくなった。〈何だったんだ?これも樹海の関係する特異な現象か……〉博は、安どのため息をつくと、さらに歩を進めた。すると声はだんだん大きくくなってきた。明らかに人間の声だった再度分析してみると、経験したことのない波長だった。ふと気が付くといつの間にか青空が顔を出し、いい天気だった。声とともに、何か違うものの音もする。ゆっくり歩を進めていくと、ぎょっとした。

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