第16話
「今日は、家に帰るんだ。一晩だけ。」
わかってはいた。出張の合間にたまに、帰って用事をしたり、家族と過ごす。極々、当たり前の事だ。
電話は、出来ない…寂しい夜を過ごすことになる。
麻衣から連絡することはない。
どんな風に過ごしているのか、つい考えてしまう。
そんなときでも、ラインの着信音がピコッとなる。
チラッと見ると麻衣の娘だ。
可愛い孫の動画が送られてくる。
また、ピコッとなる。今度は、常連のお客さんだ。
居酒屋と言ってもスナックに近いお店なので時にはお客さんと連絡を取ることもある。
「また、行きまーす。」
このお客さんも、県外の人だ。
返信をしながら、真一のラインを待っている麻衣。
なかなか来ないので、テーブルや椅子を拭く。
そして、また、ピコッ。
『お疲れさま~』スタンプのアイラブユー。
つい、口元がほころぶ。
そんな些細なことでも、安心するのだ。
世間は、不倫を批判する。
そうなんだろう確かに。
数ヵ月前には、麻衣も不倫をするとは思っていなかった。でも、真一の魅力にどんどん惹かれていった。
そして、正樹と距離を置くようになっていた。
正樹とは、家に行ったり、レストランに行きワインを一緒に楽しんだ。麻衣は正樹が、『好きだよ』みたいなことや『付き合おう』とかいう言葉がないので何を考えてるんだろうと思い、麻衣もよくわからない感情だった。楽しんではいるが、どこか気を遣ってしまう。恋愛感情があるようで友達のような感覚だった。
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