第17話

正樹は、よく「僕たち、夫婦みたいだ」などと麻衣に言うがどういう意味なのか、麻衣には分からなかった。どうしても、口下手だからそういう言葉でしか気持ちを表せなかったのかもしれないし、そこまで考えてないとも思えた。


途中から、不倫だろうが何だろうが麻衣は真一の事が頭から離れなくなり、中毒のようにはまっていった。


数ヵ月前、去年の12月。

その日は、最後までお店にいた真一が麻衣にキスしてきてから、お互いに隠していた想いが溢れてきて、自制が効かなくなったのだ。


その時に、初めて麻衣はこんなにも好きになっていた気持ちに気付いた。その日から、もう、正樹にプライベートでは、会わないと決めて。


そのうち、真一は麻衣の飼い猫の、「ネオに会いたいな」と、言い出した。

それは、麻衣の家に行きたいということなのか悩んだが、ある日、お店が終わり近くのバーに行った帰りに

思いきって麻衣は言った。


「うち、来る?」


「うん、いいのか?」


「いいよ。」


何度も二人でこの時の事を話した。

「あの時は緊張したよ。でも、すぐ懐いてくれて良かった。お腹出してぐるぐる言って、可愛いよな、ネオ。」


「そうなの?緊張してたの?

真ちゃんは、優しいから、ネオには分かるんだよ。」


そんな昔話を、何年も二人で語れたら幸せだろう。


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