5
翌日、目を覚ました川島は朝食を食べている。その向かいでは妻も朝食を食べている。子どもたちはすでに学校に出かけている。騒然とした朝を終え、これから少し遅い朝食だ。
突然、電話が鳴った。川島は驚き、受話器を取った。こんな朝早くから何だろう。事件だろうか?
「もしもし」
「もしもし、瀬田です」
瀬田だ。瀬田はすでに警察署に来ていて、仕事を始めている。
「朝早くから何ですか?」
「あっ、川島さんですか? 平野健一さんが殺されました」
川島は呆然となった。健一が殺されるとは。信じられない。まさか、隠し子の事が原因で殺されたんだろうか?
「何? 平野健一さんが殺されただと」
「はい」
「あなた、何があったの?」
川島の妻は心配した。ここ最近、事件があって忙しい。早く元の日常に戻ってほしい。
川島は警察署に行かず、平野建設に向かった。健一の遺体は社長室で見つかった。すでに警察が社長室に集まっている。有名人の殺害という事で、多くのマスコミも集まっている。
孝和も呆然としている。まさか、育ての父が殺されるなんて。一体、誰がこんな事をしたんだろう。
「まさか、父が殺されるなんて・・・。信じられない。信じられない!」
孝和は泣きながら社長室を出て行った。これからは自分がこの会社を支えていかなければならない。だが、こんな突然の事で殺されたら、なかなかできない。どうしたらいいんだろう。
「よっぽどショックを受けてるんだろうな」
川島と瀬田はその様子を見ていた。育ての父とはいえ、殺されたのはとてもショックだろうな。なかなか立ち直れそうにないな。
「ん?」
遺体を見ていた警察が、何かに気付いた。健一が紙切れを持っている。一体何だろう。犯人を捕まえるための手掛かりになるかもしれない。
「どうしたんですか?」
川島と瀬田は紙切れを持った警察に反応した。その紙切れは何だろう。犯人がわかるための手掛かりだろうか?
「何だこのメモ」
川島はその紙切れをよく見た。紙切れには『シンイチ』と書かれている。
「シンイチ・・・」
池内だろうか? やはり犯人は池内で、死んだのではなく蒸発していて、どこかで生きているって事だ。一体、池内真一はどこにいるんだろう。何としても捕まえないと。
「池内真一?」
「かもしれない」
瀬田もそう思った。犯人は池内真一だ。今もどこかで密かに生きていて、大輔の車を使って同級生を次々と殺した。人の車をこんな事に使うなんて、許せない。大輔にも迷惑をかけているんだ。大輔も困っている。絶対に逮捕しないと。
社長室には、健一の妻、郁子(いくこ)もいる。郁子も泣いている。こんな事で夫が死ぬなんて。
郁子は泣きながら社長室を出て行った。川島と瀬田はその様子をじっと見ていた。当たり前の日常が突然なくなるのは、とても辛い事だな。早く立ち直って、頑張ってほしいな。
正午過ぎ、川島と瀬田は近くの定食屋で食べていた。今日の日替わり定食は、豚肉の生姜焼きだ。川島も瀬田も、この定食が好きだ。
そこに、郁子がやって来た。
「どうしたんですか?」
「孝和ったら、最近寝不足なのよ。しっかり寝ているはずなのに」
2人は驚いた。アリバイが違う。寝ているというのに。何をしているんだろうか?
「えっ!?」
「夜にスポーツカー乗り回してるのかしら?」
ここ最近、孝和は夜にスポーツカーを乗り回しているという。社長の偽の息子である孝和は、運転免許を取ったのをきっかけにフェラーリを購入したという。孝和は今でもそのフェラーリを愛王していて、どこかに行くときは必ずフェラーリだと言う。
「の、乗り回しているんですか?」
乗り回している。ひょっとしたら、孝和の正体は池内だろうか? ならば、孝和を早く逮捕しないと。
「はい、うちの子、フェラーリ乗ってるんですよ。で、夜に乗り回してるって」
「ちょっと見せてもらっていいですか?」
2人は、孝和が乗っているフェラーリを見せてもらう事にした。ランボルギーニではないけど、一応見てみよう。何か手掛かりになるかもしれない。
「はい、いいですけど」
2人は考えていた。どうして孝和は嘘を言ったんだろうか? そこに事件にかかわる何かが隠されているんだろうか?
3人はパトカーに乗って平野家に向かった。平野家はここから10分ぐらい走った所にある。
3人は平野家にやって来た。その家は、岡崎家の近くにある。こんなに近い所にあるとは。その時、2人は気づいた。
家のガレージには赤いフェラーリがある。それが孝和の車だ。
「これがフェラーリですか?」
「はい」
2人はフェラーリをじっと見ている。フェラーリは全く汚れがなく、ピカピカだ。とても大切にしているようだ。
「ちょっとドライブレコーダーを見てもいいですか?」
「はい」
3人はドライブレコーダーを見る事にした。これはランボルギーニではなくフェラーリだが、もしこの中に走っていた映像がなければ、別の車で走っていたという証拠だ。だとすると、ランボルギーニで沢井を走ってた可能性が出てくるかもしれない。
3人はドライブレコーダーを再生した。3人はじっと見ている。だが、何も記録がない。
「あれっ!? 走った映像がないですね」
郁子は首をかしげた。以前、電話をかけた時にはスポーツカーの音がしていた。だが、走った記録がない。だとすると、あの音はどのスポーツカーだろう。
「そうよね」
そこに、孝和がやって来た。孝和もそのビデオを秘かに見ていたようだ。
「だから、寝てたんだよ」
孝和は怒っている。色々と追及されるのを嫌っているようだ。
「ごめんね。色々と追及して」
「いいんだよ」
孝和は部屋に戻っていった。郁子はその様子をよく見ている。2人はその様子を見ている。では、その日の夜は何をしていたんだろうか? 明日、もう一度聞いてみよう。
その夜、今日も大輔は慌てていた。何かを探しているようだ。
「大ちゃん、今日は何がないの?」
今日は何がないんだろう。幹江は首をかしげた。
「今度はバットがないんだよ。首位打者を獲得した時にサインしたバットがあったんだけど、どこにあるんだろう」
プロ野球選手だった岡崎大輔は現役時代にもらったトロフィーやバットを多く保管している。その中でも、首位打者を獲得した時に使っていたバットに自分のサインを書いたものを保管していた。
「今朝はあったの?」
「ああ。夕方もあったんだよ」
大輔は毎朝、保管しているトロフィーなどを見ている。その時はちゃんとあった。さらに、夕方にも見たが、やはりあった。
「え?」
幹江は驚いた。夕方あったのに、どうして今になって消えているんだろう。
結局諦めて、大輔と幹江は防犯カメラを見始めた。今日も来ないんだろうか?
「あーあ、結局誰も来なかったわね」
大輔は焦っていた。やはり警戒して来なくなったんだろうか?
「警戒して来なかったんだろうか?」
「そうかもしれないわね」
幹江もそう思っていた。どこかで大輔や幹江の様子を見ているかもしれない。注意深く見ておかないと。
「うん」
「私、居酒屋行ってくるからね」
幹江は退屈になってきたので居酒屋に行く事にした。
「ああ」
幹江は家を出て、近くの居酒屋に向かった。
大輔は1人で防犯カメラを見ていた。いつかは絶対来るだろう。絶対に撮って警察に言おう。これ以上事件で終われるのはこりごりだ。
と、突然、1人の男がやって来た。もう9時を回ったのに、誰だろう。幹江が戻ってきたんだろうか? 大輔は振り向いた。
「お前・・・」
だが、そこにいたのは幹江ではない。大輔は程なくしてガムテープで口を封じられた。そして、手足もガムテープで縛られ、ランボルギーニに乗せられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます