『資源小惑星 Θ』
やましん(テンパー)
『資源小惑星 Θ』
『これは、フィクションです。どちらかというと、ギャグに近いものです。』
はるかな、太陽系外からやってきた小惑星が、お茶の間の話題になることがあります。
現在の人類の実力では、なかなか、乗り付けてじかに調べるわけにはゆきません。
しかし、そのぶん、ロマンチックな夢が楽しめるとも言えるのかもしれません。
あるとき、またまた、正体不明な小惑星が発見されました。
地球に衝突する可能性はありません。
しかし、この小惑星の軌道を調べると、太陽系の外から飛んできたことが解ったのです。
さらに、どうやら、光速にかなり近い速度で、太陽系付近までやってきて、そのあと、急ブレーキをかけたようなのです。
つまり、自然の者ではない、というわけです。
ダマリン天文台の担当者さんが言いました。
『分析の結果、驚くべきことがわかりました。』
天文台長さんは、ノータラン科学賞受賞者でした。
『ほう? どんな。』
『これを、聞いてください。』
担当者は、音声信号を再生したのです。
不思議な音色の何かがなり始めました。
『なんだろうね? これは。』
『台長、これ、たぶん、音楽ですよ。デジタル信号を、様々なやり方で復調してみました。』
『ぶべっ❗ どこが? 音楽? しかも、むしろ、君の創作ではないかい?』
『まあ、まだ、確定はできませんが、これは、つまり、無調音楽だと言えます。』
台長さんは、音楽は苦手で、理解が行きません。
『つまり、まあ、ものすごく、ばっさり言うと、台長さんがいつも、宴会で歌う『ナギーサの三度バット』は、ペンタトニック、つまり五音音階を用いた、民族音楽的な旋律に、西洋音楽的なハーモニーなんかの色付けをしているもので、あそこには、中心となる、つまり、太陽みたいな音があり、主音と呼ばれます。今日の音階は、昔は旋法と呼ばれたもののなかから、生き残った、短音階と長音階が使われます。たとえば、C音を主音とする長音階によって構成されるのが、Cドゥア、ハ長調です。しかし、1オクターブ内の音をすべて公平にあつかい、中心となる音がないようにするのが、無調音楽の基本で、かなりむかしから、いろんな人が試したのです。20世紀は無調音楽の、最盛期でした。』
『よけい、分からなくなった。でも、ぼくには、そうした認識がない。そんな感じのうたは、聴いたことがないな。』
『まあ、そこが、無調音楽の泣き所ではあったのだと思います。音楽の上では、完全な平等でも、社会的には、一部の人にしか理解されなかった。壮大な矛盾です。まあ、大切なのは、これは、調性音楽ではないということで、しかも、なおかつ、規則的に作られている。まさに、人為的な音楽ですよ。ぼくは、宇宙人の存在と、音楽のありかたを研究していまし。あ、趣味ですよ。宇宙人の音感は、地球人の音感とは、まったく異質なものだろうと想像していて、かの名高い映画のようには、うまくは、行かないだろうと、思います。いずれ、これは、恐るべき発見です。飛んで行けないのが、もどかしいです。台長さんは、またまた、有名になりますよ。』
・・・・・・・・・・・
資源小惑星の中では、丸い宇宙人が、会話していました。
『これは、綺麗な惑星さんだね。文明もある。しかし、『廃品回収共通信号』を理解しないみたいだから、まだ、文明も、ごく、初期程度だな。近寄ってみたが、無駄だったかな。』
『あ、課長、出ました、ほら、あれ。』
地球から、なにかが飛び出してきたのです。
かなりの、低速です。
『おー。でたかあ。いやあ、やはり、見た目で判断はできないな。放射性廃棄物だあ。まいどありー。』
真っ黒な資源小惑星が、地球から上がってきた、原子力推進火星探査衛星を、ゲットしました。
『あ、お礼は、なにがいいのかなあ。初めてのお得意先だし、わからないなあ。』
『まあ、生き物ではない方が無難ですよ。やはり、定番の『宇宙トイレットペーパー』にしましょう。たくさんあるし。』
彼らは、カプセルに『宇宙トイレットペーパー』と呼ばれる謎のお返しを詰め、案内書を同封して、地球に送り返しました。
『まいどありー。わが、Θ宇宙廃品回収カンパニーは、第1銀河から第116銀河まで、幅広く営業をいたしております。いま、販路拡大キャンペーン中です。お返し、倍返しです。また、次回もよろしくお願い致します。次回は、こちらの太陽系には、一万周期後に立ち寄ります。ぜひ、ご利用ください。』
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『資源小惑星 Θ』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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