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from タケル


「今日は一段と疲れたな…」


散々話した挙句、女の前で泣いてしまったこと過去を伝えても怒らなかったこと俺にとっては好都合なものの、正直よく分からない


「ルカは注意深く見てた方がいいな」


俺の家計を知ってるからこそ、危険はきっと他の奴らよりは多くなる。あの人達が動かないように見ていないと。



『とーさん、これって』


『動物園のチケットだな。家族全員で行くぞ毅流』


『みんなで!?やった…、あ、ありがとうございます!』


幼い頃の記憶、父は1度だけ家族で動物園に行こうと誘ってくれた。何かと抹殺していく仕事が多い俺の家で、普通の家族がやってることができたのかこれが最初で最後だと知らずに当時の俺は喜んでいたのを覚えてる。


『いつ、いつ行くの???』


『そうだな、今週末の日曜で期限までだからその日に行こうか』


『あと、3日ですね!』


『そうだな』


微笑んでくれた父の像も見たのはこれが初めて。親父はこうやって笑うんだって覚えた日でもあった。だけど結局行けなかった、急遽入った任務のおかげで


『行くって行ったのに!』


『また機会があればな』


『嘘つき!!』


『おい、毅流。父さんに謝れ!』


分かってた、行けないって。でも…

少しばかり期待してたんだ。



「懐かしい夢だな。はぁ…」


スマホを見ればこないだより増えてる通知の数。もちろんその中には親父もいる。


「はー…気色わりぃな」

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