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from 西野ユア
✎ …
いつからだろう。
人と仲良くなりたくない…友達になんかなりたくないと思ってしまったのは。少しだけいや、だいぶ思い出し出したくない1ページをめくるかのように目を閉じる。あれは、中二の夏の事だった。
・
「やめてよ。。!」
「人の男に色目つけんのが悪いんでしょ?」
「私は。。先輩の彼氏さんに色目なんてつけてな…」
「黙ってろよ!!この泥棒猫!!」
大好きな友人がいじめられて庇ったことをいいことに今度は私がその標的にされた。その相手は同じ部活の先輩である ルナ先輩。表上は美人で優しい先輩を演じているが裏ではこんな風に後輩をいじめて生き甲斐かのように笑っている最低な人だって誰かに言ったらこの人の内申下がるかなとか思ったりもしたけど私にはそんなことは出来ない。
「助けなんて求めても救ってくんないわよ。今日はこの辺にしといてあげるわ」
増えていくアザの数と、心には見えない傷を置いてルナ先輩はどこかに消えていった。毎日同じ時間に呼び出されてストレス発散道具にされる。こんな日々過ごすのはもう嫌だった。私のことを優しく育ててくれたお父さんとお母さんにはこんなこと言ったらきっと大変なことになるのが目に見えてるから言えないし、かと言って話せる先輩と言えば…1人思い浮かぶけど迷惑なんてかけられない。
「生きてても心地いい気がしない。。」
1層のことこの屋上から飛び降りたらどれだけ楽なのか。1回ぐらいやってみようかな、よいしょとフェンスを跨ぎこのまま足を外したら落ちる所まできていた。あとは覚悟を決めるだけ…それだけだったのに。
「えー落ちちゃうの?勿体ないなぁ」
「!!だ、だれ??」
「そんな怯えなくても、僕は君のこといじめたりしないよ。そこ危ないからこっちおいで?」
急に現れた、私と同じぐらいの背の子が
私を誘導する。死にたかったはずなのに何故だろうか、初めて会うのに何年もずっと一緒にいる感覚に陥る。そして私はその言葉を信じてしまった。
「うん偉い偉い!まだ君若いんだからこれからたくさんいい事あるよ?死ぬなんてまだ早いよ」
リン と名乗った明るく切実な子は
そうやって私をなだめる。さっきから何も話してないのに私の情報を知っているのは何故だろうか。多分聞いたらそれくらい余裕でしょと言われるのはわかってることなんだけど。
「もう、嫌なの。死なせてよ」
「えーやだ」
「なんで?リンにはわからない
生きていていいのか分からないんだよ?そらなら消えた方が」
スラスラ出てくる言葉の数に、表情を変えずに話すリン。私が言い切ったのと同時にリンは口を開いた
「じゃあ、僕が生きててもいいって思わせてあげる!だからおいで!」
人なんて簡単に裏切るものなのに、
だから信じない方が楽だった。それなのに目の前にいる子は今まで会ってきた人達とは違うと思えるのは何故?気づけば、リンの手を触っていた。私の行動に一瞬だけ驚いたと思えば、すぐに笑ってグッと手を引っ張られる。いつの間にかぎゅっと抱きしめられていた。とてもそれは暖かくて落ち着く匂いに包まれながらリンは優しい声で
「よく頑張ったね。ユア、もう大丈夫
僕がいるからね」
何よりも欲しかった言葉をくれた。
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