十二月十九日

 抹茶も好きじゃなくなったし、手帳型のスマホケースでもないし、お揃いの腕時計も付けなくなったし、リュックも新しいのに変えたし、プレゼントしたLINEの背景は使ってないし、もう昔の裕貴はどこにもいないんだって気づいたんだ。


 多分、これをメッセージで送ったとしても既読が付いてそれで終わり。スタンプが来れば関の山。当ててあげる。これを読んだ後、きっとあなたは「関の山」の意味を検索するでしょう、ってね。


 現実よりゲームの方が楽しい? ううん、多分あなたはそんなことは思ってなくて、でも「初対面の人の方が話しやすい」なんて気持ちは私には一生分からなくて。もう、映画を一緒に観に行ってくれないんだね。


 確実性のある予定を入れるのを嫌って、「いつか」で逃げればそれで良くて。人混みが嫌いで、「食べることは一番の幸せ」だと思ったことがないような人。じゃあ、私と食べたあのパンケーキは「美味しい」なんて思ってなかったのかな。


 かわいいを自覚していて、でも男なのに、そう言われることを嫌っていなくて。六つ歳の離れた兄がいて、きっと家族から愛されていて。私はその気持ちを一生分からなくて。「もの」で補えるはずなんてなかったことに気づいた私は馬鹿で。


 だから、今更何を与えようとも──いや、多分あなたは物欲なんて無いし、そういうアピールをしたことも無くて、もしあったとしても私はそれを知らない。笑顔で、祝える自信ももう無い。


 三歳までに何回抱きしめられたかで性格が決まるのなら、あなたはきっと何百、いや何千と見えない愛情を受けたはずで。私の醜い所有欲なんかとは根本的に違って、「やさしい」人なんだろうな、と思っている。


 いや、やさしくなんかない。結局のところ、こうすれば「やさしい」と思われるんだろうなと考えながら行動してることの方が多いことを私は知っていて、それを許せなくて。取り替えることのできない人生を憎みながら、あなたに「誕生日おめでとう」とやさしく言う。

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