九月十日

 俺は知っている。好きな人に求めるのは「清潔感」であって、「かわいさ」でないと言えば嘘になること。「顔」じゃなくて「性格」かと言えば、多少は「顔」も俺の中での評価基準に入ってしまうこと。


 だから、分からなかった。「まーのお姉ちゃんかわいい」がどこを見て言われているのか。それは、恋愛対象として見た時のかわいさなのか、すれ違った時に「あ」ともう一度振り返って確認したくなるような瞬間的なかわいさなのか。


 俺が思うかわいい「顔」の判断と同じことが、他人によって姉に適用されているということを感じて、少しむず痒い気持ちになって、でもそれが何なのかは分からなくて。誕生日おめでとう、と言われた時のような気分だった。


 照れと恥ずかしさが混在した中で、ただ一つ、「ヤンヤンつけボーが食べたい」と思った。今日は俺の誕生日なんだから誰か買ってこいよ、と思った。

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