九月八日

 サーティワンは抹茶とチョコミントの組み合わせが合うんだって。少なくとも、僕はそう思ってる。誕生日は何を食べようか。アイスケーキもいいなぁ。


 九月生まれだった。同じ誕生日の人がクラスに四人もいた。クリスマスの夜の出来事が一般的だとすれば、まあそんなに不思議なことでもないかと独り合点した。


 小さい頃に行った遊園地の、お化け屋敷がトラウマだった。おんぶされて後ろを向きながら進んでいたため、暗闇に怯えながら、そこに何かがいる気がした。いや、確かにいた。見えたのだからしょうがない。


 正体が分からないのに、それでも人は進まないといけないことがある。老いた先に何があるのか。死とは何か。


──Death is what gives life meaning.


 死は人生に意味を与える。僕はふと、この言葉を思い出す。そんなこと言うなよ。死んだ後は、その意味を振り返ることなんてできないだろうに。


 僕は思う。ロウソクの数だけ生きた年数があるなら、それは誰かが一緒に数えてくれていたってことでもあるんだと。感謝しようと思った。家族や、周りの人に。誕生日おめでとうと、自分へのご褒美にメロン味のピュレグミを口に含みながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る