四月二十六日
出席番号順だと気づいていれば、もっと早く探せたはずだった。たとえそれが、あいうえお順ではなく、アルファベット順に変わっていたとしても、見つけるべき「あ」はAで、一番はじめに来る名前だったから。列をなす、卒業生に目を向ける。
ここで言わなきゃ、いつ言うんだろうって。ずっと、思っていた。違うクラスで、違う学年で、違う身長で、違う性別で、違う声で、形で、いつも僕の名前を呼んでくれて。
卒業式。その式典の、在校生代表として送辞を任された僕には、そこに参加する正当な理由があったから。今日こそは、先輩に別れを言うんだと心に決めていた。
卒業式が憎い。先輩の今年の誕生日を祝うには早すぎて、僕が先輩と出会うのは遅すぎたから。まだ、何も始まっていないのに。
生まれてきてくれてありがとう。推しに対するオタクの言葉だと思われたっていい。僕は先輩に、言いたかった。
先輩。少し、早いかもしれませんが、今言わせてください。
「四月二十六日、誕生日おめでとうございます」
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