うつろい、日々
押田桧凪
四月二十三日
箸で持ち上げたもやしは、いつものようにぐったりとしているのに、どういうわけか今日はその様子に触れてほしくないように思えた。
「おねーちゃん?」
食卓でうつむいたあたしの顔を隣から心配そうにのぞきこんでくる妹。
なんでさあ、あたしの誕生日なのにもやしなの?
その言葉をもやしと一緒につよく、つよく噛み砕いて、ぐっと飲み込む。すり潰して、みそ汁とご飯と、込み上げてくる怒りを消化する。
胃の中で全部混ざってなくなるなら、ケーキなんかなくていいと思えたし、何より──。
「おねえちゃん。たんじょうび、おめでとう」
屈託なく笑う妹の顔が見れるだけで、あたしは十分満たされているのだと思えたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます