うつろい、日々

押田桧凪

四月二十三日

 箸で持ち上げたもやしは、いつものようにぐったりとしているのに、どういうわけか今日はその様子に触れてほしくないように思えた。


「おねーちゃん?」


 食卓でうつむいたあたしの顔を隣から心配そうにのぞきこんでくる妹。


 なんでさあ、あたしの誕生日なのにもやしなの?


 その言葉をもやしと一緒につよく、つよく噛み砕いて、ぐっと飲み込む。すり潰して、みそ汁とご飯と、込み上げてくる怒りを消化する。

 胃の中で全部混ざってなくなるなら、ケーキなんかなくていいと思えたし、何より──。


「おねえちゃん。たんじょうび、おめでとう」


 屈託なく笑う妹の顔が見れるだけで、あたしは十分満たされているのだと思えたから。

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