第44話 道中は楽しく
野営初日はお互いに色々な話をして過ごした。
「実はな、ナゾウくん。リュウキは辺境伯様の王都邸で働く侍女と恋仲でな。本当は夜も馬を飛ばして一日でも早く王都に行きたいと思ってるんだよ」
「な、オウキ! フンッ、そう言うお前は王都一の商会の看板娘のエメリアの顔を早くみたいと思ってる癖に」
「クッ、リュウキ、何故それをっ!?」
などと二人の騎士がお互いの暴露話をしてくれた。それを聞いていた俺やミナ、アランにアカネちゃんも大声で笑う。
拠点確定に俺の技能も上乗せしてあるから、ココはかなり安全だし、マロも居るしね。
「リュウキさん、スミマセン。俺達が足手まといですね。本当なら馬を飛ばして会いに行きたいでしょう?」
俺は答えが分かっていながらそうリュウキさんに言ってみる。
「何を言ってるんだ。私は主からナゾウくん達と行動を共にするように言われてるんだから、そんな気持ちは微塵もないぞ!」
そう力強く言うリュウキさんに、アランが聞く。
「で、俺やナゾウが婚約者(妻)と一緒に居るのを見て本音は?」
「リア充、爆発しろっ!! ですね!」
その返答にまた皆が爆笑する。こんな感じで楽しい雰囲気で旅は続いたんだ。勿論、道中に魔物が出てきたけど、リュウキさんやオウキさんに教わりながら、俺達で倒していった。そう、俺達はレベルは圧倒的に上がってるけど、経験が不足しているから。その経験を積む為にリュウキさん、オウキさんに頼んで出てくる魔物は倒させて貰っている。
出てくる魔物は多種多様で、俺達は本当に良い経験を積む事が出来たんだ。そして、王都までもう少し(四日〜五日)という場所で、アラン、アカネちゃん、リュウキさん、オウキさんに言われて街道から外れた場所に行き、遂に俺の豪邸をお披露目する事になったんだ。俺も初めてだからワクワクしているんだけどね。
そして、出してみたら皆が呆然としていたよ。何故ならば、この世界には無い建築物だったから。でも、俺やミナ、アカネちゃんにとっては懐かしいとも言える木造平屋の大豪邸が目の前に建っていたんだ。
いわゆる俺の親の世代なんかが、大きな木造平屋を見て庄屋さん(地主さん)のお屋敷だなって言ってたような家だ。庭は日本庭園になっている。
コレにはアランやリュウキさん、オウキさんのコチラの世界の人だけじゃなく、俺、ミナ、アカネちゃんもビックリしてしまった。
そして、何故か俺とミナは敷地内に難なく入れたのだが、他の人達は入れないようなんだ。そこで、俺は、四人に向けてこう言ってみた。
「ようこそ我が家へ。歓迎します、入って下さい」
すると四人が敷地内に入れるようになったんだ。どうやら家主である俺や、配偶者認定されてるミナ以外は、俺かミナが招かない限りは一歩も敷地内に入れないようだ。あっ、マロは最初から普通に入ってきたけどね。
俺はそれは面倒だなと思っていたけど、敷地内に入って技能を確認したら認証許可を出せる様になっていた。そこで、今回はアラン、アカネちゃん、リュウキさん、オウキさんに自由に出入りできる様に許可を出したんだ。今日から王都に着くまでは夜はこの豪邸で休む事にしたから、その方が都合がいいと思ったからね。
マロはアチラコチラを嗅ぎまわっているけど、俺の所に来て言った。
『ナゾウよ。この屋敷は凄いな。万が一の時には立派な避難所にもなるだろう。アソコにある蔵には食料が山ほど入っておるし、アチラの蔵の中には井戸があって水に困らぬ様になっておるようだ。そして、屋敷の周りには結界が張られておる。神獣である我はともかくとして、邪な心を持つものは一歩もこの敷地内に入れぬようになっておるわ』
と、半ば呆れたような感じで教えてくれた。
『そうなんだな。それで、王都まであと少しらしいけど、夜はこの屋敷で過ごす予定だけど、大丈夫かな?』
俺は懸念した事をマロに聞いてみた。
『認識阻害もかかっておるから、もっと街道の近くでも大丈夫だぞ。まあ、鬱陶しいヤツが来るのが嫌ならば今日のように街道を外れた場所に出すのが良いとは思うが』
『認識阻害があるなら鬱陶しいヤツなんて来れないんじゃないか?』
俺がそう確認したらマロが、
『出して直ぐと、収納する際には認識阻害の効果が無くなるからの。その時に見た者がおれば根掘り葉掘り聞かれる事になると思うぞ。だから、人の居ない(来ない)場所で展開した方が良いと我は思う』
ナルホド、マロの説明を聞いて俺は皆に教えられた事を伝えた。
「うん、それなら明日からも少し面倒だけど街道から外れた場所に出すようにしよう」
そうリュウキさんが言ってくれ、皆も賛成してくれた。そして、遂に俺達は屋敷の中に入った。
「おおー、コレは? こんな作りは初めて見る。コレは何なんだ? ナゾウ」
アランが入るなりそう質問して来た。俺も知識としてはあったが、初めて見た。
「アラン、コレは土間と言ってな。こんなに広いのは俺も初めて見るんだけど、俺達が産まれる前の時代にはコレが普通だったらしい」
そう、扉を開けると大きな土間になっていて、奥まで続いていたんだ。そして、入ってすぐの所には煮炊き出来る釜が五つもあった。ソレを見たミナとアカネちゃんが、物凄くワクワク顔になっていた。
「ナゾウ、これを使って料理したいの。薪はちゃんとあるのかな?」
「ミナちゃん、私にも手伝わせて!」
言われて俺は薪を確認しようとしたら、入り口に丸太が積まれていたのを思い出した。先ずは薪を作る所からだな。俺も見様見真似だけど……
そうして、俺の豪邸での初めての仕事が始まったんだ。薪作りをアランとリュウキさんにお願いして、俺は家の中を確認していく。
そしたら風呂は男女別の大浴場だったけど、コチラも薪を利用してお湯にする必要があるようだ。俺と一緒に確認してくれたオウキさんは、何だかワクワクするなと笑顔で言ってくれたのが救いだ。
部屋は全部で三十もあった。土間から入って直ぐに全員どころか、もっと大勢でも座れるテーブルと椅子があったので、ソコを食堂に決めた。そこは靴を脱ぐ必要も無いから、出来た料理を運ぶのにも楽だからね。
そして、上がり
「ナゾウくん、ここではコレが普通なのかい?」
そう聞かれたから、そうなんですと答えて俺は理由を説明した。
「靴などの履物を脱いで家に入ると、何だか解放感がありませんか? 俺達は家の中は安全だとの気持ちが強くて、シッカリと休む為に履物を脱いで寛ぐんです」
その説明にオウキさんは納得してくれたようだ。
それから、各部屋を見て回り俺とミナの部屋、アランとアカネちゃんの部屋、リュウキさんの個室、オウキさんの個室を決めて土間に戻った。
ミナとアカネちゃんはアランとリュウキさんが作った薪を使用して料理をしている。俺とオウキさんは薪作りに参戦して、風呂の準備をする事にした。
そんな感じで俺の豪邸での時間は緩やかに過ぎていったんだ。
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